【9月4日 AFP】ブラジル・リオデジャネイロで2日に起きた国立博物館の火災について、博物館が必要としていた予算を削減した政府を非難する声が各方面から上がっている。火災ではブラジル国内で発見された人骨としては最古となる1万2000年前の女性の遺骨を含め、貴重な収蔵品の多くが焼失した。

「公的資金の締め付けにはこれ以上我慢できない」。同博物館と関係の深いリオデジャネイロ連邦大学(Federal University of Rio de Janeiro)のロベルト・アントニオ・ガンビーネ・モレイラ(Roberto Antonio Gambine Moreira)氏はAFPの取材に怒りをぶちまけた。火災は「投資、資金の不足がもたらした当然の結果だ」と断じる。

 2日夜に発生した火災は3日早朝までにほぼ鎮火したが、炎は1万3000平方メートルの館内の貴重な美術品などが収蔵された各部屋を焼き尽くした。消火活動が進められる間から、ブラジルの多様性を示す文化遺産の焼失を嘆く声は、予算を削減した政府に対する怒りの声に変わっていった。

 ソーシャルメディアは非難の書き込みであふれ、現場でも約500人がまだくすぶり続ける博物館を囲み、人間の鎖をつくって抗議の意を示した。

 アレシャンドレ・ケレル(Alexandre Keller)館長は変わり果てた博物館の前で「嘆いているだけではだめだ。この博物館の歴史を再建するためには、資金を持つ連邦政府の支援が不可欠だ」と訴えた。

 ブラジル国立博物館は1818年に建造され、2000万点を超える貴重な美術品や歴史的遺物を収蔵していた。ただ、政府による予算削減のあおりを受けて、館内の多くの部屋が公開できない状態だった。

■「計り知れない損失」

 収蔵品には、エジプトやグレコ・ローマン(Greco-Roman)時代の美術品などのほか、ブラジル国内で発見された最古の人骨「ルチア(Luzia)」、ミナスジェライス(Minas Gerais)で発見された恐竜の骨格標本、重さ5.3トンの世界最大級の隕石「ベンデゴ(Bendego)」も含まれる。

 ブラジル自然史博物館のパウロ・クナウス(Paulo Knauss)館長は、特にルチアの焼失は「文明に関心を持つすべての人にとって計り知れない損失だ」と嘆く。

 文化財の年代は、ポルトガル植民地時代の1500年代から共和制を宣言した1889年まで400年に及ぶ。

 消防当局によれば、今回の火災による正確な被害規模はまだ不明だが、死傷者が出たとの報告はない。建物は外部こそ被害を免れたものの、屋根の大部分が焼け落ちている。現在、消防隊員らが焼け跡を回って、救い出せる収蔵品がないか慎重に調べているという。

 セルジオ・サ・レイタン(Sergio Sa Leitao)文化相はツイッター(Twitter)で「宮殿(博物館の建物)も収蔵品もほとんど何も残らないだろう」と悲観的な見方を示している。(c)AFP