【9月4日 AFP】中国は習近平(Xi Jinping)国家主席が掲げる大経済圏構想「一帯一路(One Belt One Road)」で大規模なインフラ輸出を進めてきたが、ここに来て、それを減速させる障害に遭遇している。中国に対する多額の債務を抱える一部の国では反発も生じ始めた。

 一帯一路は2013年に習氏が提唱したもので、「新シルクロード構想」とも呼ばれている。多くの国に数十億ドルを貸し付け、世界中で鉄道、道路、港湾の建設を推進する構想だ。

 しかし5年後の今、一帯一路は返済能力がない他国に中国が仕掛けた「債務のわな」ではないかとの懸念が広がっており、習氏は自らの肝煎りの構想を弁護する状況に陥っている。

 8月27日、一帯一路提唱から5年に合わせて行われた演説で習氏は、「一帯一路は『中国クラブ』ではない」と述べ、「開放的で誰でも参加できる」事業だとアピールした。習氏によると、一帯一路事業に連なる国々との貿易額は5兆ドル(約555兆円)を超え、これらの国々への中国の対外直接投資額は600億ドル(約6兆6600億円)を上回っている。

 だが、その価値に疑問を呈する声も上がり始めている。

 マレーシアのマハティール・モハマド(Mahathir Mohamad)首相は8月に北京を訪問し、200億ドル(約2兆2000億円)相当の高速鉄道計画を含む中国関連3事業を中止すると述べた。

 パキスタンでは、数十億ドル規模の中国・パキスタン経済回廊(CPEC)事業に関し、中国への債務を返済できるのかという懸念が広がる中、新首相に就任したイムラン・カーン(Imran Khan)氏が透明性を高めることを約束した。

 一方、インド洋上の島国モルディブの元大統領で、亡命中のモハメド・ナシード(Mohamed Nasheed)氏は、インド洋地域における中国の行動は「土地の収奪」であり「植民地主義」だと批判している。モルディブの債務の80%を占めているのは、対中国債務だ。

 また、スリランカはすでに中国から多額の借り入れをしたことに対する重い代償を払っている。昨年、14億ドル(約1550億円)の事業に対する中国からの融資を返済できなくなり、戦略上重要な港を中国に99年間貸し出すことになったのだ。