【9月3日 AFP】イスラエル公共放送協会Kanは2日、同国でタブーとなっている反ユダヤ主義のドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)の曲がラジオで放送されたことについて、「ミス」だったと謝罪した。

 Kanのクラシック音楽専門局「ボイス・オブ・ミュージック(Voice of Music)」は先月31日、ワーグナーの歌劇「神々の黄昏(Twilight of the Gods)」の一部を放送。

 ワーグナーが19世紀に制作した民族主義的要素を含んだ壮大な文学・音楽作品には、反ユダヤ主義やミソジニー(女性への嫌悪や蔑視)、民族純化といったナチス・ドイツ(Nazi)の原思想が含まれるという見方があり、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)が愛好した作曲家がワーグナーだった。

 イスラエルにはワーグナー作品の演奏を禁止する法律はないが、過去に演奏が試みられた際に国民が反発や不快感を示したことから、オーケストラや会場側が演奏を自粛している。

 Kanの広報は2日、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の生存者への配慮からワーグナーの音楽は放送しないという長年の方針に変更はないと強調した上で、「聴取者に謝罪する」と述べた。

 イスラエル・ワーグナー協会(Israel Wagner Society)会長で弁護士、父親がホロコースト生存者のヨナタン・リブニー(Jonathan Livny)氏は、ワーグナーの曲が公共ラジオで流れたことを「歓迎」。放送されたのはワーグナーの思想ではなく、ワーグナーが生み出した優れた音楽であって、聞きたくない人はいつでもラジオのスイッチを切れると指摘した。(c)AFP