【9月2日 AFP】深刻な干ばつに見舞われているイラクで、干害などの気候に関連する安全保障問題への対応を怠れば、イスラム過激派が再び台頭するリスクがあるとする報告書が1日、公表された。

 この調査報告書は7月、国連安全保障理事会(UN Security Council)に対して、気候に関連する安全保障リスクについての専門家作業部会が提出したもの。

 気候に関連するリスクの監視・管理を怠った場合、ISIS(イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の別称)や「ポストIS」期のテロ集団が、資源に制約のあるコミュニティー内部で支持を獲得し、力を取り戻す危険性を増加させることになると説明。気候変動と安全保障との明らかな関連性を指摘している。

 イラクは壊滅的な影響を及ぼしている干ばつの真っただ中にあり、水位の低下が各所で、1931年以降最低の水準に落ち込んでいる。

 イラク政府は近隣諸国と水資源の公正な分配をめぐる正式な合意を結んでおらず、雨不足と近隣諸国のダム関連プロジェクトの影響で、チグリス川(Tigris River)流域の住民700万人超が立ち退きを余儀なくされるリスクにさらされていると、報告書は指摘。特に農村部では、水不足がコミュニティー間の緊張を高める恐れがあるとしている。

 専門家作業部会はイラクで活動する国連機関に対し、気候変動のリスクを監視・報告したり、気候がもたらす立ち退きという問題を「ポストIS」期の復興プランに盛り込むことで、当局を支援したりするよう求めている。(c)AFP