■「常識外れの」アブラムシ

 特に危険な害虫とされるロシアコムギアブラムシのケースを考えてみよう。ロシアコムギアブラムシは非常に小さな昆虫だが、侵略的外来種とみなされている北米では、1980年代に初めて確認されて以来、重大な脅威となっている。

 メリル氏によると、カナダや米国ではこのアブラムシの雄は一匹も確認されていない。雌が無性生殖を行い、基本的に「自分自身の生きたクローンを産んでいる」ようだと、メリル氏はAFPの取材に語った。「このアブラムシは胎生で、子は発育した状態で生まれる。そればかりか、子が生まれる時にはすでにその体内で孫にあたる個体が発育している。常識を超えている」

 同氏によると「このアブラムシは、理想的な温度条件の下では非常に速やかに繁殖することが可能」で、1日に8匹のペースで子が産まれるという。「理想的な条件下では1~2匹のアブラムシが、1兆匹になる可能性さえある。個体数の増加ペースの速さは常軌を逸している」

 研究チームは今回のシミュレーション結果が、環境に放出する殺虫剤の量を単に増やすのではなく、暑さと病害虫に強い作物の選択や輪作など、各地域により即した解決方法を模索するきっかけとなることを期待している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN