ロヒンギャ迫害、残虐行為の証言録を作る人々
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■「川に投げ込まれた赤ん坊は何人?」
バングラデシュの人権監視団体「オディカル(Odhikar)」の現地調査員、オスマン・ジャハンギル(Osman Jahangir)氏もまた、詳細な証拠をまとめている一人だ。ジャンギル氏がロヒンギャ難民に投げ掛ける質問から、迫害の残虐性が浮かび上がってくる。「ガソリンはどこから持ち込まれたのか。何人の兵士にレイプされたのか。何人の赤ん坊が川に投げ込まれるのを見たのか」
ジャハンギル氏はロヒンギャの村の座標をグーグルアース(Google Earth)で調べ、書き留める。可能ならば、診察記録やスマートフォンの映像も手に入れる。
こうして集めた情報は、提携する香港のアジア法律情報センター(Asian Legal Resource Centre)を通じてICCに送られる。綿密な現地調査が終わった後に、正式にICCに付託する計画だ。「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争について学んだ。あの場合は裁判が行われ、責任が問われた」と、ジャハンギル氏はAFPに語った。「ロヒンギャにも正義をもたらしたい」
非政府組織(NGO)やボランティア団体には、ベテランの調査員を派遣し、今年は1000人以上の難民のインタビューを行っている国連や米国務省のような資金や人材が欠けている。また司法専門家は、素人が証言を集めることで証拠の適切性が損なわれ、裁判で検察側の不利になる恐れを懸念している。
だが、避難民キャンプでの証言集めの熱意に変わりはない。コミュニティーリーダーを務めるモヒブラ氏は古いノート型パソコンの画面で、ロヒンギャのボランティアたちがアップロードした数々の迫害事例のデータベースをスクロールしていた。そこには、レイプやモスクの焼き討ち、殺害などの詳細があった。「誰もこれを否定できない」
ロヒンギャの代理人を務める弁護士らは、ICCが捜査の実施を決定する見通しについては、かなり楽観している。「だが、それによって、誰かがすぐにでも裁判にかけられるかといえば、それはあまり楽観していない」と、人権関連の国際法律事務所「グローバル・ライツ・コンプライアンス(Global Rights Compliance)」のウェイン・ジョーダッシュ(Wayne Jordash)弁護士は言う。
一方、荒れ果てた難民キャンプでは、ジョーダッシュ氏が代理人となっているシャンティ・モヒラのメンバーたちが、長い時間待つ準備はできていると語る。メンバーの一人、スクタラさん(25)は「私たちはこれが非常に長い時間、もしかしたら何年もかかることは分かっている。それでも気にしない。正義が欲しいだけです」と語った。「私が死んだとしても、いつの日か子どもたちが正義を得る。それで満足です」(c)AFP/ Nick PERRY and Redwan RIDON