「記憶に留めておく一枚の報道写真」

フェンスの向こうへ行きたい。無理ならせめて食べ物だけでも。そんなささやかな彼の願いは叶うのだろうか。流入するシリア難民の対応に追われるEU。一部の国は自国の安全を確保するために国境にフェンスを設置した。その結果、EU圏内の移動の自由が危機に晒されることとなり、シリア難民は東欧各国の国境で足止めされ、なかなか思うようには進めない。ヨーロッパに行ければ。自らの安全と将来を賭けて移動してきた彼ら難民にとっては、予想していない事態だっただろう。人道的措置によって庇護され、あわよくば定住して経済的に安定した生活を。そう思った彼らの願いは大きく裏切られてしまった。それでも彼らは進み続ける。救いを求めて手を伸ばし続ける。先進国は、そして国際社会は、自らを頼るその手に、彼らの願いに応えることはできるのだろうか。「21世紀最大の人道危機」と呼ばれるシリア難民。伸ばされた彼らの手は、その解決を切に願っている。


早稲田大学 赤坂拓哉 難民セクション