【8月3日 AFP】ロシア・モスクワにある博物館で「最も有名な職員」として知られる黒猫が今週、不可解な誘拐事件の被害に遭い、ロシア国民の関心を集めている。

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 誘拐されたのは、作家ミハイル・ブルガーコフ(Mikhail Bulgakov)を記念したブルガーコフ博物館に2005年からすみついている15歳の雄猫で、真っ黒な長い毛の持ち主。ブルガーコフの小説「巨匠とマルガリータ(The Master and Margarita)」に登場する大きな黒猫にちなみ、ベヘモート(Begemot)と名付けられた。

 博物館の職員が警察にベヘモートの捜索願を出したのは1日午後。正体不明の女がベヘモートを抱いて地下鉄駅に向かったとの目撃情報を受けてのことだった。

 地元テレビ局モスクバ24(Moskva-24)は、「モスクワ中が騒然としている」とベヘモート行方不明のニュースを報じた。国営テレビ局TVセンター(TV Centre)も、「ブルガーコフ博物館の最も重要な一員の行方が分からなくなった」と伝えた。

 ベヘモートはブルガーコフ博物館の正職員で、博物館内を自由に歩き回ったり中庭で日なたぼっこをしたりする様子を来館者が写真に撮影するなど、名物猫として知られている。

 警察の捜索開始から数時間後、ベヘモートは博物館近くの劇場で発見されたが、住所などの身元情報が記入された首輪はなくなっていた。警察発表によれば、おびえた様子のベヘモートを通行人が見つけ、保護しようとしたのだという。

 博物館側は2日、「みなさんありがとう。みなさんの助けがなかったら、悲劇的な結末を迎えていたかもしれません」とフェイスブック(Facebook)に投稿した。ベヘモートには新しくGPS追跡機能付きの首輪を用意するという。

 無事に戻ったベヘモートは、博物館の館長と警察官に抱かれる様子をテレビカメラに披露したが、日刊紙イズベスチヤ(Izvestia)の記者に猫パンチをお見舞いする一幕もあった。

 しかし、モスクバ24によると、事件はこれで幕引きとはならなかった。誘拐犯の女が再び博物館に現れ、ベヘモートはきちんとした世話をされていないと主張して再度連れ去ろうと試みたのだ。獣医師の診断によると、ベヘモートは「申し分ない健康状態」だが誘拐のストレスを克服するには2、3日かかるという。

 ロシアでは、他にも博物館や美術館の職員として扱われている猫がいる。北西部サンクトペテルブルク(St. Petersburg)のエルミタージュ美術館(Hermitage Museum)では、猫たちが正職員としてネズミ退治の任務に就いている。(c)AFP