【8月1日 AFP】サッカーのヘディングによる脳へのダメージは、女性の方が男性より5倍ほど大きくなる恐れがあるとする米国の研究結果が7月31日、発表された。アマチュア選手100人近くを対象とする調査に基づく結果だという。

 米学術誌「Radiology(放射線医学)」に掲載された研究論文では、サッカーでの頭部外傷を防ぐには、男女差を設けたガイドラインの導入も視野に入れるべきとの考えが示された。

 論文の主執筆者で、米アルベルト・アインシュタイン医学校(Albert Einstein College of Medicine)のマイケル・リプトン(Michael Lipton)教授(放射線医学・精神医学・行動科学)は、「男性に比べて女性の方が頭部外傷後の経過が悪いことは、研究者らや臨床医師らは以前から気付いていた。だが、それは単に女性の方が自発的に症状を訴える傾向が強いからにすぎないと一部では言われていた」と話す。

 しかし、「症状の自己申告ではなく脳組織の他覚的変化を測定した今回の研究に基づくと、実際に女性はサッカーボールのヘディングによって脳損傷を受けるリスクが男性よりも高い可能性がある」のだという。

 研究では、男子選手と女子選手それぞれ49人に「拡散テンソル画像(DTI)」と呼ばれるMRI(磁気共鳴画像)スキャンの一種を実施した。DTIは組織内の水分の平衡性を調べることにより、脳の白質の健康状態を分析する。

 選手の年齢は18~50歳で、過去1年間に行ったヘディングの申告回数は両グループでほぼ等しく、男性が平均で487回、女性が469回だった。

 論文によると、スキャンの結果は「女子サッカー選手にみられる脳白質の総損傷量が男子選手の場合に比べて5倍大きい」ことを示していたという。白質が損傷を受けていた脳部位の数は、女性が8か所だったのに対し、男性は3か所だった。脳白質は異なる脳部位間の情報伝達に関与している。

 また、選手にみられる脳の変化については「無症候性」だったと、研究チームは指摘している。これは思考能力の変化に関する自覚症状の申告が選手からは何もなかったことを意味する。だが、脳の変化は認知機能の低下や行動上の変化などを含むさらなる損傷や脳障害の前兆となる可能性があるため、懸念が後々まで残ることになる。

「重大な機能障害が起きる前に、脳外傷の蓄積に関する危険因子──女性の場合はヘディングなど──を特定しておくことが賢明だ。そうすれば、さらなる損傷を防ぐとともに、回復を最大限に高めるために行動することが可能になる」と、リプトン教授は説明した。

 今回の研究では、男女差が生じる形態上の理由については述べられていないが、首の強さ、性ホルモン、遺伝的差異などが原因として挙げられることを、一部の専門家らは示唆している。

 国際サッカー連盟(FIFA)によると、世界では約3000万人の女性および女児がサッカーに携わっているという。(c)AFP