■「せっかく」たどり着いた、「せっかく」待ったのだから…

 マウスとラットは、迷路の四隅にある「餌場」で餌がもらえるよう訓練を受けている。実験中、「オファーゾーン」と呼ばれる場所にたどり着くと、餌を与えられるまでの待機時間が音で知らされる。「オファー」を受け入れる場合、マウスやラットは、待機エリアに移動する。そこではカウントダウンのサウンドが流れ、1秒~30秒間待たなければならない。この実験を受けるまでに、サウンドが何を意味するかは訓練で教え込まれている。

 一方、人間の場合は、餌の代わりに動画が用意され、子猫や風景、社交ダンス、バイク事故の様子などを見ることができる。視聴できるまでの時間はダウンロードバーで示される。参加者は「オファー」を断り、そのまま次の部屋に進むこともできる。

 実験では、マウスやラットは、人間と同じく、いったん待機状態が始まると、その待ち時間が終わるまで待ち続ける傾向にあることが分かった。

「すでに待っていればいるほど、最後まで待ち続けようとする傾向が強くなる」とレディッシュ教授は指摘。それは、行列に並んでいる人間によく似ている、と話した。

 だが、待機にコストがかからないわけではない。実験全体の時間には限りがあるからだ。つまり、マウスやラットがたどり着いた餌場で餌が出るのを待てば待つほど、実験中に食べられる餌の量自体は減ることになる。

 だがこの研究には限界がある。参加したのは65人の人間(大学生)とマウス32匹、ラット32匹のみで、それぞれに与えられたタスクも全く同じではない。とはいえ、さらなる実験への道を開いたといえる。(c)AFP/Ivan Couronne