■2部リーグの平均観客数はわずか2000人

 W杯で使用された12のスタジアムのうち、観客数の比較的多いロシア・プレミアリーグ(1部)のクラブが本拠地としているのはわずか6か所。モルドビア・アリーナ(Mordovia Arena)を使用するFCモルドビア・サランスク(FC Mordovia Saransk)は、昨季3部からようやくナショナル・フットボールリーグ(2部)に昇格し、多少は観客増が見込めるようになったばかりだ。

 さらに、黒海沿いのリゾート地ソチ(Sochi)のフィシュト・スタジアム(Fisht Stadium)には、そもそもホームチームがなかった。6月に大統領の古くからの友人である富豪の主導で、サンクトペテルブルクに本拠地を置いていたチームが移転してくることが決まったが、普段のそのチームは、熱心なサポーター数百人を集めることしかできていない。

 W杯用スタジアムをホームとする5クラブがプレーする2部は、昨シーズンの平均観客数が2029人。プレミアリーグは1万2000人から1万3000人だが、W杯で使われたスタジアムは最低でも4万4000人ほどの収容人数がある。

 当局者が日刊経済紙コメルサント(Kommersant)に語ったところでは、スタジアムの運営費は合計で年間最大1億ドル(約111億円)に達するという。政府は2億ドル(約223億円)前後の資金援助を行うつもりだというが、それは今後5年を合わせた金額で、しかも資金はユースの整備やその他の費用にも使用されるという。

 そのため、政府からの援助だけで十分だと考える地方のリーダーは少なく、急場しのぎの策もそう多くはない。

 サランスクの州知事は、のみの市を立てる案を考えていたといわれるが、プーチン大統領が異例の禁止令を出したためつまずいた。一方、ニジニーノブゴロドは一部を医療施設に転用することを提案しているが、これについては政府は何も口を出していない。

 カリーニングラード(Kaliningrad)は、スタジアム周辺に自由貿易区域をつくることを考えている。エカテリンブルク(Yekaterinburg)は、スタジアムから突き出す形でW杯用に追加した、仮設の1万2000席を撤去しようとしている。(c)AFP/Dmitry ZAKS