■そこかしこに遺体

 一方、イエメン人のモハマド・サレム・ドゥハイシュさん(33)は妻と生後8か月の息子と共に、済州島の地元の一家に宿泊させてもらっている。イエメンの首都サヌアの国際空港の職員だったドゥハイシュさんは、サウジアラビア主導の連合軍と戦っているイスラム教シーア派(Shiite)系の反政府武装組織「フーシ派(Huthi)」が近くの空軍基地を爆破した後に逃げた。「自分の周りのそこかしこに遺体が散乱し、戦闘、銃声、爆弾だらけだった」とAFPに語る。

 ドゥハイシュさんは仲介業者に600ドル(約6万7000円)を払ってビザを入手し、オマーンへ行き、そこからマレーシアへ渡って3年間、不法就労していた。一時は親せきが数人いる米国へ行くことを希望していたが、反移民を掲げるトランプ氏が大統領になったためにその考えをあきらめた。

 韓国のことは、アジア全域で人気のある韓国ドラマで学んだという。「韓国政府と韓国国民には、私たちを受け入れ、助けを必要としている人間として扱ってほしい」

 韓国の京郷新聞(Kyunghyang Sinmun)は、ドゥハイシュさんのような人をどう扱うかは、韓国の人権状況にとって試金石になると論じた。韓国でも日本による1910~45年の植民地時代と1950~53年の朝鮮戦争中に、数百万人が半島から脱出したとされている。

 同紙は「近代史に起こったすべての悲劇のたびに数えきれない人々が、自分たちの意思に反して自国を後にし、他の国の誰かの善意に頼らざるを得ない状況に陥ってきた」「これらの難民を受け入れることは、わが国が国際社会に負っている借りを返す機会だ」と述べている。(c)AFP