【7月13日 AFP】サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)で決勝進出を果たしたクロアチア代表のまさかの快進撃に対し、旧ユーゴスラビアの隣国のほとんどは称賛の意を表しているが、今のところセルビア大統領からの応援は期待できないようだ。

 スポーツのメジャー大会が開催されるたびに、バルカン半島の旧ユーゴスラビア諸国からは「ユーゴスラビアが一つの国だったら、われわれはどれほど素晴らしいチームで戦えることか」というおなじみのフレーズが聞こえてくる。こうした懐古的な嘆きには、ボスニア人やセルビア人がいなくてもクロアチアが問題なくやっていることや、結局のところ、ユーゴスラビアはW杯で一度も決勝に進出できなかったという事実が隠されている。

 多文化が混在していた旧ユーゴスラビアのサッカーとその夢に特別な思いを抱いている人間がいるとすれば、それはイビチャ・オシム(Ivica Osim)氏だろう。同氏はユーゴスラビアが紛争で分裂する前に、同代表最後の指揮官を務めており、1990年W杯イタリア大会ではチームを準々決勝に導いたが、ディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)を擁するアルゼンチンにPK戦で屈した。

 当時セルビア軍が街を攻撃した際、オシム氏は必死に涙をこらえながら、セルビアの報道陣に対して「私が(現ボスニア・ヘルツェゴビナの首都)サラエボ出身であること」を忘れないでほしいと訴えた。現在77歳になった同氏は、クロアチアが中盤のマエストロであるルカ・モドリッチ(Luka Modric)を擁して15日に行われるフランスとの決勝に勝ち進んだ姿を見守り、クロアチアの日刊紙ユタルニ・リスト(Jutarnji List)に称賛の言葉を送った。

「彼らは個々の資質をどうにかして団結させ、疲れても決して諦めなかった。このことは、われわれには珍しい特徴だ」