■「再考の必要性も否定できず」

 セルシングさんは、勤務先の革新的なメディア企業がマイクロチップの移植を受けられる従業員向けのイベントを開催した際、多数の参加者の輪に加わった。

 特に何も感じなかったという彼女だが、左手に注射器でチップを埋め込まれた時には少しちくっとしたという。彼女は今、ほぼ毎日チップを活用しているが、ハッキングや監視に対して不安はない。

 セルシングさんは、「現代のテクノロジーが、チップをハッキングできるところまで進んでいるとは思わない」と述べつつ「でも将来、そのことについて考えることがあるかもしれない。その時にはいつでも取り出すことができる」と語った。

 とはいえ、スウェーデン南部の都市ルンド(Lund)にある放射線研究施設「MAX IV研究所(MAX IV Laboratory)」の微生物学者であるベン・リバートン(Ben Libberton)氏にとって、チップ移植の危険性は現実的だ。

 チップ移植は「感染症や免疫系の反応」を引き起こす可能性がある。だが、最も大きなリスクは、チップに格納されたデータ関係だと同氏は指摘。「現時点では、移植チップが収集・共有しているデータは少ないが、今後増えていくだろう」と述べた。

 同氏は、真の問題はどんなデータが収集され、誰が共有するかだと言う。「いつかチップが医学的問題を検出できるようになった場合、誰が、いつそれを調査するのか」。そして「移植チップで起き得ることとして、1か所に保存されるデータが多ければ多いほど、私たちの意思に反して、そのデータを使用されるリスクがより高まる」と警鐘を鳴らした。