■自然派ワインの台頭

 すでに英語版が出版されているワインコミック、「Les Ignorants」(無知なる者たち)、「A Great Forgotten Burgundy」(忘れられた偉大なるブルゴーニュ)、「Mimi, Fifi & Glouglou」(ミミ、フィフィとグルグル)などは、自分たちが飲んできたワインを見つめ直そうというフランスのムードを捉えている。

 いずれの作品にも、近年フランスで人気が急上昇し食卓をめぐる議論の的ともなっているオーガニックワインや自然派ワインが、何らかの形で登場する。

 人気作家エティエンヌ・ダヴォドー(Etienne Davodeau)氏が、ロワール渓谷(Loire Valley)にあるオーガニックワイン生産者リシャール・ルロワ(Richard Leroy)氏の農園で過ごした1年を描いた「無知なる者たち」は、すでにワインコミックの最高傑作とみなされている。

「ミミ、フィフィとグルグル」は、ワインにとりつかれた都会の住人を軸に展開する陽気で通好みのコミックだ。パリ在住の流行に敏感な友人3人組は「ワインを飲み、ワインのことを考え、ワインについて語り、ワインを夢見て」暮らしており、ブラインドテイスティングをしては「相手の鼻を明かそうと」神経戦を繰り広げる。作者のミシェル・トルメー(Michel Tolmer)氏はその様子をユーモラスに描いている。

 実際、自然派ワインのフレーバー、特徴、アロマは生産年によって大きく異なる。ワイン生産者たちは、ブドウが育った土壌や気候を純粋に表現するのに「テロワール」という言葉を使う。当然、この理解しがたいテロワールという概念も「ミミ、フィフィとグルグル」の聖域で、主人公たちは必要とあらば数本のボトルを空けてまで、ワインに含まれる土壌のミネラル成分の微細まで言い当てようとする。