【7月9日 AFP】オーストラリアで、本土では50年ぶりとなる野生のフクロネコの赤ちゃんが誕生したことが分かった。国立公園の関係者が9日、明らかにした。フクロネコはキツネによる捕食被害などで大打撃を受けていたが、赤ちゃんの誕生は種の未来に希望の火をともすものとなった。

 米粒大から飼い猫ほどの大きさに成長する、毛に覆われた肉食動物のフクロネコは、1960年代に豪本土から姿を消した。だがタスマニア(Tasmania)島で辛うじて命脈を保ち、そのうちの20匹が今年3月、生息および繁殖可能かどうか調べるため、フクロネコの本来の生息地であるシドニー南郊のブーデリー国立公園(Booderee National Park)に戻された。

 生息地の天敵を抑制するという15年に及ぶプロジェクトを受けて、本土で絶滅した肉食動物が野生に返されるのは同国で初めてのことだという。

 同公園のニック・デクスター(Nick Dexter)氏は9日、雌3匹の育児嚢(いくじのう)で複数の赤ちゃんを確認したと明らかにし、「存続可能な個体群になるまでにはいくつかの課題が残っている。だが今回の試験プロジェクトにおいて、雌のフクロネコの3割に赤ちゃんが生まれたことは良い流れだ」と述べた。

 主に昆虫を餌とするフクロネコは、長い間本土に生息していたが、1900年代の早い段階で原因不明の感染症により多数が死に、その後同国南東部でキツネが増えたことにより大打撃を受けていた。

 フクロネコの赤ちゃんは、育児嚢の中で約3か月過ごす間に体重を増やし、被毛が成長する。(c)AFP