【7月6日 東方新報】中国と英国の研究者協力の下、発掘作業が行われていた中国・陝西省(Shaanxi)西安市(Xi'an)神禾原(Shenheyuan)秦陵園(Qinlingyuan)で2006年に出土した動物の死骸は、テナガザルに属する新種であることがわかった。米誌「サイエンス(Science)」オフィシャルサイトで6月22日に発表された。

 また、当時、発掘作業に関わった丁岩(Ding Yan)氏によると、テナガザルの死骸が出土した墓に埋葬されているのは秦の始皇帝(Qin Shihuang)の祖母である可能性が高いという。

 出土したテナガザルについて調査した動物考古学者の胡松梅(Hu Songmei)氏は、3Dモデリングと長年の分析により、最終的にこの死骸はすでに絶滅しているが、新種と確認した。胡氏は「テナガザルの生存は急速に脅かされており、現存しているテナガザルの保護の重要性を暗示しているのではないか」と語った。

 現任の陝西省考古研究院商周研究室副主任丁氏が記者に語ったところ、テナガザルが発見された秦陵園では、04年から08年までの4年間にわたり、考古学者らが秦陵園で発掘調査を実施した。発掘の過程で、大量の動物の死骸を発見した。

 丁氏の説明によると、「13か所の陪葬された墓を調査したところ、テナガザルは第12号の墓から出土した。家畜ではない動物の骨が出土したことで、張天恩(Zhang Tianen)隊長は急いで陝西省動物考古学者の胡氏に連絡し、発掘現場へ向かわせた」と語った。

 十数年ぶりに、胡氏は第12号の墓に陪葬された「珍奇な」鳥獣を見た時の光景を振り返った。陪葬された墓は長方形で、北面から鳥類の骨が数多く発見された。

 南面には、身をかがめた2頭のツキノワグマ、羊、ヒョウ、オオヤマネコ。「最も感動したのは、珍しい霊長類の死骸だった。霊長類の頭蓋骨、下顎、上腕骨を採取した。霊長類の上腕骨はとても長く、牙もとても大きかった。ほかの墓で出土したアカゲザルやゴールデンモンキーの頭蓋骨とは全く異なっていた。霊長類であるテナガザルの可能性を疑った」

 その後、胡氏は死骸の写真を中国科学院脊椎動物と古人類研究所の霊長類専門家、趙凌霞(Zhao Lingxia)氏に送った。趙氏は鑑定後、この死骸は確かにテナガザルに属すると判断したが、どの種類なのかは確認できなかった。

 さらに多くの古墳の情報を調べるため、12年に陝西省考古研究院(Shaanxi Provincial Institute of Archaeology)と英国の科学者が協力した。発見されたテナガザルを傷つけないため、研究者はDNAの採取をあきらめた。代わりに遺骸に3Dモデリングを実施し、16か所のポイントにタグ付けを行った。

 その後、研究者らは数年かけて、タグ付けしたポイントと現在、世界で生存する数百のテナガザルの骨格を比較した結果、どのテナガザルにも属さないことが分かった。

 テナガザルは、世界で最も絶滅の危機に瀕している霊長類だ。「霊長類で一番孤独な近親」と呼ばれるクロテナガザルは、03年にはわずか13頭の生存が確認されるにとどまっている。国家林業局の長年の努力により、現在では27頭までに回復しているが、まだ絶滅の危機から脱したとはいえない。(c)東方新報/AFPBB News