【7月28日 AFP】南アフリカの電気技術者、フィワンコシ・ムキゼさん(66)は、去年5月に病院で肺がんと診断された。そして、15か月後にスキャンを受けに来るよう伝えられた。

 しかし診断から1年後、ムキゼさんは治療を受けることなく亡くなった。同国で2番目に人口の多いクワズールー・ナタール(KwaZulu-Natal)州では、これは珍しい話ではない。

 この地域では、過去3年で数百人もの患者が死亡している。活動家や医師らは、州当局が医療の予算をカットし、辞めた医師たちの後任探しをしていないことにその原因があると指摘する。

 同国の人権委員会によると、クワズールー・ナタール州の公立病院の患者らは、がん専門医の診断を受けられるようになるまでに5か月~1年待ち、その後の放射線治療および化学療法を受けるまでにさらに8か月待つという。

 同州のがん治療をめぐっては、ソーシャルメディアで「#KZNOncologyCrisis」というハッシュタグがつくられるほど危機的な状況となっているが、こうした現状に直面しているのは、何もクワズールー・ナタール州に限ったことではない。

■窮迫した医療制度

 アーロン・モツォアレディ(Aaron Motsoaledi)保健相は6月、他国と同様にがん患者が増加し、医師が足りない状況にある南アフリカの医療制度について、全体的に「窮迫している」ことを認めた。

 同保健相は「われわれは、ほとんどの病院の管理技術が足りていないか、もしくは粗末であることをいやというほど認識している」と述べ、首都ヨハネスブルクとクワズールー・ナタール州の患者たちが強いられている、治療までの待ち時間を解消するために1億ランド(約8億3000万円)を拠出すると発表した。これは医療機器の買い替えやスタッフの雇用などに充てられる予定だ。

 モツォアレディ保健相はAFPの取材に対し、「われわれは公立病院が私立のがん専門医を雇う手助けをしている」と語り、「彼らとの契約は、ひと月450人の患者を診ることだ。(新たに購入する)2つの機械が動き始めれば、さらに雇う予定」と続けた。