【7月3日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は2日、移民問題で対立し辞任の意向を示していたホルスト・ゼーホーファー(Horst Seehofer)内相と合意に達した。

 メルケル首相は合意内容について、ドイツ国境近くに難民申請希望者を留置して手続きを行う施設を設置する内容だと説明した。ゼーホーファー内相は「今後オーストリアとドイツの国境を越える不法移民を阻む方法について私たちは明確な合意に至った」と述べ、内相を続ける考えを強調した。

 合意によるとすでに空港に設置されている施設と似た「トランジットセンター」をドイツの国境付近に設けて難民認定審査を迅速化し、申請が却下された難民認定希望者は、相手国の同意を条件として、その人が最初に欧州連合(EU)に入域した国に送り返すというもの。EU入域国とドイツの間で二国間の取り決めがない場合は、難民申請が却下された人をオーストリアとの合意に基づいてドイツ国外に出すとしている。オーストリアとはこの問題について今後交渉するという。

 この合意内容は、特に地中海を渡って欧州に向かう移民・難民の主な入域国となっているイタリアとの関係で新たな問題を含んでいる。移民に厳しい姿勢を取っているイタリアのマッテオ・サルビーニ(Matteo Salvini)内相は、イタリアはこれ以上移民・難民を受け入れる余地はないと強調している。

■連立崩壊の危機、ひとまず去る

 メルケル氏のキリスト教民主同盟(CDU)と与党連合を成すキリスト教社会同盟(CSU)党首のゼーホーファー氏が内相を辞任すれば70年に及ぶ両党の関係が壊れ、メルケル首相は新しい連立相手を探すか、この1年で2度目となる総選挙に打って出ることを余儀なくされるところだったが、両党が合意に達したことで連立政権崩壊の危機はひとまず去った。

 2015年にドイツへの大量の難民流入を認めたメルケル首相は強い反発を受け、選挙でも低迷。昨年9月の総選挙では反移民・反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し議席を獲得。昨年10月のバイエルン(Bavaria)州の選挙でもAfDはCSUを脅かした。ゼーホーファー内相辞任による新たな総選挙というシナリオは、得票を伸ばす可能性が世論調査で示されているAfD以外のすべての政党にとって避けたい展開だった。

 もっとも、2日のCDUとCSUの合意がドイツ政府の政策となるにはメルケル首相の別の連立相手である社会民主党(SPD)の承認が必要となる。SPDは、CDUとCSUの合意内容を自動的に承認することはしないと表明している。(c)AFP/Frank ZELLER