■米ロの核戦略

 ただ、NPTは核兵器の獲得を目指すごく一握りの国々を阻止できなかった。2003年にNPTを脱退し、その3年後に初の核実験を行った北朝鮮のほか、インドとパキスタンはNPT未加盟のまま核兵器を保有した。イスラエルも核兵器を保有していると大方が認識している。

 ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のベアトリス・フィン(Beatrice Fihn)事務局長は、核兵器の廃絶ではなく削減を目的としているNPTには根本的に不備があるとの見解を示した。

 NPTは核保有国と非核保有国を平等に扱っていない上に核軍縮の期限を規定しておらず、核保有国の「誠実な」核軍縮交渉のみが頼りだ。加えてNPTは、国連安保理の常任理事国5か国が核兵器の性能を高め、より大規模で危険性の高い核兵器を開発するのを阻止する上で何も効果がない。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は3月、「世界中どこでも到達可能な」巡行ミサイルなど「無敵の」新型兵器を開発したことを明らかにした。一方、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)政権は、ロシアが欧州の紛争で小型の核兵器を使用するリスクへの対抗策として、小型の核弾頭などを新たに開発する意向を表明。フランスや英国なども巨額の資金を投じて、自国の核兵器の抑止力を強めている。

 ICANのフィン事務局長は「5か国の核軍事力は依然として、世界を何度も繰り返し破壊できる規模だ」と警戒感を示した。また、フランス国際関係研究所(IFRI)の核拡散問題を専門家コランタン・ブルストラン(Corentin Brustlein)氏は「大規模紛争のリスクが新たに高まっているからこそ、一部の国々は核兵器に重きを置いた防衛態勢に固執している」と分析した。