■父の想いで苦痛を希望に

 モハマドさんはイスタンブールの病院でAFPの取材に応じ、「手術の後、娘は動き回ることができず、テントの中でずっと座っていました」と語った。「娘をテントから連れ出すため、強く当たらないようにスポンジ素材を詰めた管材を娘の下肢に付けることを思いつきました」

「それから、ツナの缶詰の空き缶2つを(管材の先に)付けました。プラスチックでは地面との摩擦に耐えるだけの強度が不足していましたから」

 この急ごしらえの義足でマヤさんはテントの外を歩けるようになったばかりか、自力で避難民キャンプの学校に通うこともできるようになった。モハマドさんは、マヤさんの義足のプラスチック製の管材を月1回、空き缶は週1回交換しているという。

 車いすに座った父親が取材に応じている間、マヤさんは、この数日間の経験にとまどっている様子で父親の腕に抱かれていた。モハマドさんにも義足が提供されることになっているが、何よりも気がかりなのは娘の将来のことだという。

 モハマドさんは「(自分のことよりも)娘が歩けるようになることの方が大切です。そうすれば自立できますから。私たちにとって生まれ変わったようなことになるでしょう」と語った。「娘が苦痛なく歩き、登下校する姿を見るのが私の夢です」

 手作りの義足で歩くマヤさんの写真にひどく心を打たれたと言うチュルジュ医師は、マヤさんとモハマドさんの義足の費用を肩代わりすることに決めたという。チュルジュ医師は「世界中の人たちから寄付の申し出がありました。しかしこの問題はもう片付いています。私が費用を負担します」と語った。

 チュルジュ医師は、「マヤさんが使っていたものを本当の意味で義肢と呼ぶことはできません。彼女が歩くための間に合わせのものです」と話したが、マヤさんが実際に歩いていた以上、モハマドさんがイドリブの避難民キャンプで手作りした義足は大きな恩恵をもたらしていたといえると指摘。「何も持たないモハマドさんは死にものぐるいのエネルギーで苦痛を希望に変えたのです」と語った。(c)AFP/Ezzedine SAID