【6月29日 AFP】2016年にスペイン北部パンプロナ(Pamplona)で行われた牛追い祭り「サン・フェルミン祭(San Fermin Festival)」の最中、5人の男による集団レイプの被害に遭った女性が事件後初めて沈黙を破り、他のレイプ被害者たちに「黙っていないで」と呼び掛けた。

 スペイン全土に衝撃を与えた事件の被害者女性の手紙は27日、同国の人気テレビ番組の中で読み上げられた。

 事件当時18歳だった女性は、「友人でもいい、親戚でもいい、警察でもいい、ツイートでもいい。どんな方法でもいいから、声を上げることが大事」「黙っていないで。黙っていれば、彼らを勝たせてしまうことになる」「誰もこんな辛い思いをしてはいけない。お酒を飲んだことやパーティーで人に話し掛けたこと、一人で家に帰ったこと、ミニスカートを履いていたことを、誰も後悔する必要などない」

 犯行に及んだ20代後半の男5人は強姦罪を含めた性的暴行罪に問われていたが、今年4月、より罪の軽い性的虐待で禁錮9年の判決を言い渡された。

 この判決はスペイン全土で抗議行動を引き起こしたが、被告らは不服として上訴。今月21日にパンプロナの裁判所が保釈金6000ユーロ(約77万円)で上訴の判決が出るまでの保釈を命じたことから、さらに抗議デモが起きている。

 5人は、犯行の様子をビデオ撮影し、メッセージサービス「ワッツアップ(WhatsApp)」で自慢していた。この中で「ラ・マナダ(La Manada、「群れ」の意)」と名乗っていた男らは被害女性が性行為に同意したと主張し、女性の携帯電話を盗んだ罪のみ認めていた。

■「信じてくれた人々に感謝」

 女性は手紙の中で、被害者たちに向けてこう記している。「どうせ信じてもらえないから…と考えてしまうかもしれないけれど、それでも誰かに知らせてください」「闘う力なんて自分にはないと思うかもしれない。でも、きっとあなたは人が持つ力に驚くことになるでしょう」

 事件をきっかけにスペインでは被害者女性を支援する動きが大きく広がり、ソーシャルメディアには「あなたを信じる」というスローガンがあふれた。

 女性は自分を信じてくれた人々への感謝も述べた。「多くの人々が私から声を奪おうとしていたとき、会ったことのない私に声を与えてくれたすべての人々に感謝します」 (c)AFP/Emmanuelle MICHEL