【6月25日 AFP】 デザイナーのキム・ジョーンズ(Kim Jones)はフランス・パリで23日、多くのセレブが見守る中、デザイナー着任後初となる「ディオール(Dior)」19年春夏コレクションの新作を発表した。新鮮で都会的なテイストを歴史あるクチュールブランドにもたらした。

 ジョーンズの「ディオール オム(Dior)」初のコレクションを見ようと有名セレブたちがショーのフロントローに詰めかけた。あまりの人の多さに「ディオール(Dior)」のアドバイザーであるデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)とその恋人であるグザビエ・ニエル(Xavier Niel)が階段に座らなければならない状態になるほどだった。

 著名ミュージシャンやベッカム(Beckham)一家の面々のほか、俳優のロバート・パティンソン(Robert Pattinson)、モデルのケイト・モス(Kate Moss)やナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)らの姿もあった。

フランス・パリ市内で開催された「ディオール」19年春夏コレクションの様子。写真右はモデルとして登場したデンマークのニコライ王子(2018年6月23日撮影)。(c)AFP PHOTO / FRANCOIS GUILLOT

 デンマークのニコライ王子(Prince Nikolai of Denmark)もショーに登場し、軽やかで明るいコレクションを披露。エフォートレスでクールな新作となった。

■「ルイ・ヴィトン」とは真逆の方向へ

「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」では上品さとストリートスタイルを融合させ、ニューヨークのストリートウェアブランド「シュプリーム(Supreme)」とのコラボレーションも果たした英国出身のジョーンズ。彼はショーの前、「ディオール」は「ルイ・ヴィトン」とは真逆の方向へと導くとAFPに対し明かした。

 3月の就任以降初めて発表した今回のコレクションでは、「ディオール」のハイエンドなオートクチュール文化に、ジョーンズが持つカジュアルシックなテイストを見事にミックスした。

 また、普段使いもできる「C-D」ロゴのバックル、ボタンやリングの新デザインも発表。

フランス・パリ市内で開催された「ディオール」19年春夏コレクションの様子(2018年6月23日撮影)。(c)AFP PHOTO / FRANCOIS GUILLOT

■KAWSによるムッシュ ディオール

 ジョーンズはブランドの創業者であるムッシュ クリスチャン・ディオール(Christian Dior)に敬意を表し、NY出身の世界的グラフィティ・アーティスト、カウズ(KAWS)に33メートルもの高さのある像の制作を依頼。ピンクの花で表現されたディオールの手には愛犬のボビー(Bobby)が座り、ショーのセンターピースとして設置された。

 約7万本ものバラとボタンの花で作られた像は遠くから見るとスーツを着たピンクの象に見え、人気テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」のグェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)やケリー・オズボーン(Kelly Osbourne)、韓国の俳優チョン・ヘイン(Jung Hae-in)、ホアン・ジンユー(Huang Jingyu)などのスターが、一緒にセルフィー写真を撮ろうと列をなした。

 ジョーンズが「ミレニアル世代にとって最も重要なアーティストである」とするカウズは、「ディオール」の象徴ともいえる蜂もアニメチックに変身させた。

 パリで披露された他のコレクション同様、ジョーンズのコレクションは軽やかでフェミニンに仕上がった。シャツ、コートやボンバージャケットには、花の刺しゅうが施された。ライトグレー色のトワル・ド・ジュイを多く使用し、フローラルなコンビネーションはシューズにも使われた。

フランス・パリ市内で開催された「ディオール」19年春夏コレクションの様子(2018年6月23日撮影)。(c)AFP PHOTO / FRANCOIS GUILLOT

■ジェンダーの境界性はさらに曖昧に

 ファッション業界で最も注目されている一人でもあるジョーンズは、ジェンダーの線引きをさらに曖昧にした。透け感のあるシャツには、チュールやオーガンジーに繊細なフェザー模様を刺しゅうした。

「ジェンダーはもはや関係ありません。2018年ですからね」と、ブランドの初期に使われていた淡いピンク、グレーや青をリバイブさせたジョーンズはAFPに語った。「LA(ロサンゼルス)では、多くの子たちが普段着としてピンクを取り入れている。『ピンクだから着ない』なんてことはもうありませんよ」

「ディオール」のシングルボタンのダブルジャケットも復活。バスケシューズや、ブーツとスニーカーを掛け合わせたようなシューズと合わせた。また、胸元をストラップ付きのボタンで留めるタイプのダブルジャケットも発表した。

 ジョーンズならではのストリートスタイルとクチュールを最も表現していたのは、フーディーのようにフードを施したシルクのシャツだ。

フランス・パリ市内で開催された「ディオール」19年春夏コレクション。ショーフィナーレに登場したアーティスティックディレクターのキム・ジョーンズとジュエリーデザイナーのユン(2018年6月23日撮影)。(c)AFP PHOTO / FRANCOIS GUILLOT

■新生ディオールに必要不可欠な存在

 3月にジョーンズが就任してまず最初に行ったのは、ジュエリーブランド「アンブッシュ®(AMBUSH®)」のデザイナーで韓国系アメリカ人のユン(YOON)と、英国出身のデザイナー、マシュー・ウィリアムソン(Matthew Williamson)に、バックルやアクセサリー用に「C-D」ロゴを制作依頼したことだった。

 彼らのデザインと、カウズ(KAWS)がデザインした蜂が施されたキーチェーンやネックレスは、コレクション全体に盛り込まれた。ショー終了後のインスタグラム(Instagram)には、それらを絶賛する声が多く投稿された。

 その評価を確信したかのように、ジョーンズは観客席にいたYOONを連れ出し、一緒にショーのフィナーレを飾った。(c)AFP/ Fiachra GIBBONS