【7月3日 AFP】もう、たくさんだ──北大西洋に浮かぶフェロー諸島。500年以上デンマークの統治下にあるこの島で生きてきた海の男、ビルガー・エンニ(Birgir Enni)さんは、今こそ、この自治領が独立を果たすときだと思っている。

 エンニさんはデンマーク領フェロー諸島の首府、ストレイモイ(Streymoy)島トースハウン(Torshavn)の港でAFPの取材に応じた。「私たちは600年もデンマークに占領されているんだ! もう十分だし、すぐにも変えなければ」。自らが所有する木製の帆船の上で、白髪頭の船長はこう語った。

 デンマークの首都コペンハーゲンから北西に1000キロ以上離れているフェロー諸島が、白地に赤と青の十字をあしらった自治領の旗を掲げるようになったのは1948年以降だ。だがフェロー諸島は独自の制度、独自の文化を持ち、その言語はバイキングが使っていた古ノルド語に由来している。

「われわれはデンマーク人ではないし、デンマーク人にはならないし、デンマーク人にはなれない。フェロー人だという、ただそれだけだ…われわれは立ち上がって闘わなくてはならない」。フェロー諸島の自治政府外務・貿易相で、進歩党(Progressive Party)の党首でもあるポール・ミケルセン(Poul Michelsen)氏はこう述べた。

 だが、今年4月に予定されていた自治権拡大を目指す改憲の是非を問う住民投票は延期され、新たな日程は決まっていない。だが計画通り、出入国に関する管理権限がフェロー当局に移管された後は、デンマーク政府がフェロー諸島について担うのは、防衛の他には外交と金融、司法政策の一部のみとなる。

「デンマークは厳しい主人というわけではない」と、進歩党の共同創設者ハンナ・イェンセン(Hanna Jensen)氏は言う。「それでもデンマークには、世界の中の位置付けで、自国なりの動機やニーズ、利益がある…デンマーク側はその中に私たちの動機やニーズや要望を盛り込もうと努力しているが、それらは常にぶつかってしまう」