【6月21日 AFP】大型恐竜のティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)は、どう猛な肉食恐竜として、舌を突き出している姿を描かれることもしばしばあった。だが、これは解剖学的にあり得ないと考えられるとの研究結果が20日、発表された。

 米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された論文によると、その理由は大昔に絶滅したT・レックスの舌が、ワニ類と同じように口の底部に固定されていたからだという。

 論文の共同執筆者で、米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)地球科学部のジュリア・クラーク(Julia Clarke)教授は「T・レックスの姿は長い間、間違った方法で再現されていた」と指摘する。

 中国科学院(Chinese Academy of Sciences)率いる研究チームは、絶滅した恐竜と翼竜の舌骨(ぜっこつ)を、それらと近縁関係にあるダチョウなどの現生鳥類や絶滅種と現存種の両方のワニ類などの標本と比較した。舌骨は顎と頸部(けいぶ)の間にあるU字型の骨で、舌を支える働きがある。

「絶滅種の恐竜の大半は、舌骨が非常に短い。同様に短い舌骨を持つワニ類は、舌が口底部に完全に固定されている」と、クラーク教授は説明した。

 さらに、動物の舌の器用さは、飛行能力を持つかどうかに関係している可能性がある。

 ワニ類は短い舌骨を持つ一方、鳥のように飛行していた翼竜と現生鳥類はさまざまな形状の舌骨を持っている。翼を持つと同時に、手や前脚を持つ動物が駆使できる器用さを失うことは、舌の動きをより多様化させる原因となった可能性がある。

 論文の主執筆者で、中国科学院・脊椎動物進化与人類起源重点実験室(Key Laboratory of Vertebrate Evolution and Human Origin)のジヘン・リー(Zhiheng Li)准教授は「獲物を扱うのに手を使えないとすれば、食物を扱うために舌の重要性がはるかに高まる可能性がある」と話す。「これは、今回の研究で提唱した仮説の一つだ」

 舌の機能と飛行の進化の間の関連性に関する解明を進めるには、さらに研究を重ねる必要がある。(c)AFP