【6月9日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は8日、ベトナム戦争(Vietnam War)中に徴兵忌避の罪で有罪となった伝説のボクサー、故モハメド・アリ(Muhammad Ali)氏の恩赦を検討していると明らかにした。

 先進7か国(G7)首脳会議(サミット)が開かれるカナダに向かう際にホワイトハウス(White House)で記者団に語ったもの。

 2016年に死去したアリ氏は、1967年に兵役を拒否して禁錮5年の判決を受けたが、この判決は1971年に最高裁で覆された。アリ氏が兵役を拒否したことは米国における公民権運動と反戦運動の推進力となった。アリ氏の遺族の弁護士ロン・トゥイール(Ron Tweel)氏はトランプ氏の意向はありがたいとしながらも、無罪が確定しているため「恩赦は不要」だと述べた。

 トランプ氏は、自身が特別検察官による「魔女狩り」捜査の犠牲になっていると不満を漏らしており、それをドラマチックに強調するかのように大統領としての恩赦の権限を行使している。

 トランプ氏が恩赦した人たちには、人種問題の絡んだ裁判で1913年に有罪となったボクシングのヘビー級チャンピオン、ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)氏、連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をしたとして有罪判決を受けたルイス・リビー(Lewis Libby)元副大統領首席補佐官、選挙資金法違反で有罪となった保守派評論家ディネシュ・ドゥスーザ(Dinesh D'Souza)氏、暴力を伴わないコカイン密輸の罪で終身刑を言い渡され米タレントのキム・カーダシアン(Kim Kardashian)さんが釈放を働きかけていたアリス・マリー・ジョンソン(Alice Marie Johnson)さんがいる。

 さらにトランプ氏は、ライフコーディネーター・ クリエーターのマーサ・スチュワート(Martha Stewart)氏への恩赦や、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の後任上院議員の指名をめぐる不正で有罪となったロッド・ブラゴジェビッチ(Rod Blagojevich)元イリノイ州知事の減刑も検討しているという。

 トランプ氏は3日、自分自身を恩赦する「絶対的権限」を持つと断言し物議を醸した。共和党議会トップのポール・ライアン(Paul Ryan)下院議長は法の上に立つ者は誰もいないと警告を発した。(c)AFP/ James MANNION