【6月6日 東方新報】中国・北京市(Beijing)内の交差点に、信号無視をした人々を映す大きなスクリーンが登場した。歩行者の信号無視を抑止するための試みだという。

 深セン市(Shenzhen)も2017年、同様の交差点横断歩行者撮影システムを導入している。

 信号無視は長年解決されない社会課題ではあるが、撮影という手法がプライバシーの侵害など新たな問題を引き起こすことも懸念されている。

 北京の交差点に設置されたスクリーンは、信号が赤になった後に歩行者が横断すると、大きな音を出しながら、その"現場"を映し出す。

 記者が現地を訪れた際には、9歳の息子を連れた母親がスクリーンを指し、「信号無視をしたら映されるよ」と言い聞かせていた。

 付近にいた交通警察官は、「この交差点は交通量が多い。スクリーン設置の効果は大きく、信号を無視する人は大幅に減った」と述べた。

 当局は今後、スクリーンの設置場所を増やすとともに、違反を記録し、個人の信用情報に登録する方針。

 信号無視した歩行者を"中継"する方法は一定の効果があるだろうが、プライバシーの問題もはらむ。中国人民公安大学(People’s Public Security University of China)交通管理学院の丁立民(Ding Limin)副教授は、「違法行為をさらす手法は、個人のプライバシーを侵害するリスクがあり、当事者の反発も買うだろう」と指摘する。

 一方、東南大学(Southeast University)交通法治発展研究中心の顧大松(Gu Dasong)教授は、「懲罰によって教育するという目的から言えば、この方法は正当性がある。ただし、撮影して中継するだけでなく、身分証の番号や姓名まで公開するなら、大きな問題がある」と述べた。

 また、信号無視の記録と個人の信用情報をひもづけることに対しては、慎重な意見が出ている。丁立民副教授は、「違反者を即、信用情報に記録することは法的にも許されず、まず本人に連絡し、弁明を聞く必要がある」と語った。(c)東方新報/AFPBB News