【6月4日 AFP】乳がんや肺がん患者の多くは、実際には化学療法を受ける必要がなく、化学療法なしでもより長期に生存できると考えられることが、3日に発表された2件の研究で明らかになった。これまでの標準治療に対する考え方に変化をもたらす可能性がある。

 これらの研究成果は、米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表された。ASCOはがん関連の専門者会合としては世界最大規模を誇る。

 一つ目の研究は、過去最大規模で実施された乳がん治療の臨床試験に関するもので、一般的な型の乳がん患者の大半は、遺伝子検査の結果によっては、手術後の化学療法と患者を消耗させ得るその副作用を避けることが可能になるとしている。

 論文の共同執筆者で、米シカゴ郊外にある医療施設「ロヨラ大学病院(Loyola Medicine)」のがん専門医であるキャシー・アルバイン(Kathy Albain)氏は、「この革新的な研究の成果より、最も一般的な型の乳がんと診断された患者の約70%は化学療法を安全に回避することができるようになる」と述べた。

 2004年から利用可能となっているオンコタイプDXと呼ばれるがん21遺伝子の発現検査は、手術後の適切な治療法を決定する上での目安となる。0から100までの数字で表される「再発スコア」が25を超える場合には、再発予防のため化学療法が推奨されるが、10未満の低い数値の場合にはそれが不要となる。

 研究では、18~75歳の女性1万人以上を対象に、化学療法とホルモン療法、あるいはホルモン療法のみのいずれかの治療法を無作為に割り当てた。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された研究結果によると、「遺伝子検査のスコアが11~25のすべての被験者、とりわけ50~75歳の女性では、化学療法を受けたグループと受けなかったグループの間で顕著な違いは見られなかった」という。

 研究では、50歳以上の女性で再発スコアが0~25、もしくは50歳未満で同0~15の患者については、化学療法とその副作用を回避することが可能とされた。一方、より若年層の同16~25の女性の場合は、化学療法とホルモン療法のグループに若干の有利性が示されたという。