■本物のブタの血、穴の空いたTシャツ 

 バブチェンコ氏によると、作戦実行の当日午後6時にメーキャップアーティストが自宅アパートに到着した。

 作戦では、バブチェンコ氏が自宅に入ろうとドアを開けた際にその場で殺害されるというシナリオだったという。

 バブチェンコ氏は、3発の銃弾を受けたと偽装するため3つの穴が開いたTシャツを渡され、目撃者もだますため横たわって死んだふりをするよう指示されたと明かした。

「本物のブタの血を使った。それを自分の口と鼻と3つの弾痕に付けた。そして私は死人になった」とバブチェンコ氏は述べた。

「妻が警察に通報し、救急車を呼んだ。(特殊部隊の)ベルクト(Berkut、警察の)がすぐにやってきた(中略)まるで映画のように、彼らは直ちに各部屋と階段の安全を確認していた。彼らはこの作戦について知らなかった」

 その際、血まみれになったバブチェンコ氏の「遺体」が階段の吹き抜けに横たわっている写真が撮影され、後にソーシャルメディアに投稿された。

 ウクライナ当局は報道陣に対し、バブチェンコ氏は救急車の中で死亡したと発表したが、同氏によれば、作戦は「遺体安置所のドアを閉めるまで」続いていたという。

 偽装の暗殺実行から遺体安置所に到着するまでの4時間ほどの間に、バブチェンコ氏はウクライナ警察と世界を欺くことに成功した。「私はニュースをチェックして、あの人はいい人だったとどれくらい大げさに言われるのかを見ていた」

 取材するジャーナリストに見つかるのを避けるため遺体安置所からは移動させられたという。「安全な場所に連れていかれた。作戦が終わったのは早朝5時のことだ。そして私は眠りにつくことができた」 (c)AFP