【6月2日 AFP】米ブラウン大学(Brown University)の経済学教授エミリー・オスター(Emily Oster)氏(38)は、新たに親になった人々に向けられる周囲からの悪いアドバイスの猛攻撃と長年闘ってきた。妊娠について書いた初めての著書で、おばあさんたちから専門家を称する人物たち、保健当局者たちまでを非難してきた。乳児の子育てに関する2番目の著作ではさらに批判を展開する予定だ。

 すべては長女を妊娠していた時のいらいらから始まった。統計学を学び、ハーバード大学(Harvard University)で経済学の博士号を取得し、当時はシカゴ大学(University of Chicago)の教授だったオスター氏は、飲酒や喫煙、加工肉、すし、さらにはガーデンニングなどが妊娠に及ぼすリスクに関する過去の研究を洗い直した。

 妊娠中の女性にとってたばこは本当に有害だとする、一般的な知識を確認することはできた。だが、コーヒーを控えめに飲むことは有害だということを示す証拠は、見つからなかった。

 すしを食べれば、サルモネラ菌に感染する可能性は確かにある。しかしそれは、妊娠中の女性がとりわけ危険だというわけではない。一方、ガーデニングは、動物の排せつ物の中にみられるトキソプラズマという寄生虫に感染する恐れがあるため、避けるべきだ。

 オスター氏の著書の中で、飲酒に関する記述は特に大きな議論を巻き起こしたが、世論の感情的な反応に同氏は動じなかった。同氏は、大量の飲酒は胎児にとって危険だが、米国やフランスは「妊娠中の飲酒ゼロ」を推奨しているにもかかわらず、控えめな飲酒に同じ影響があるかどうかは誰も証明していない、と論じた。

 オスター氏の著書「Expecting Better: Why the Conventional Pregnancy Wisdom Is Wrong-and What You Really Need to Know」(出産を見直す:妊娠に関する一般的な知識はなぜ間違っているのか、そして本当に知るべきこと)は2014年以来、8万部を売り上げ、ヘブライ語、中国語、日本語、韓国語に翻訳されている(日本では非常にまれな硬膜外麻酔に関する章は、日本語版ではカットされている)。

 妊娠と子育ての分野にはひどい研究があふれていると、オスター氏は指摘する。それに加え、最新の研究結果を医学的アドバイスに置き換えて語ることのできない医師も少なくない。例えば、ベッドで安静にしていることには意味がないことは証明されており、そればかりか害がある可能性もあるのに、なぜ多くの医師はいまだにそれを推奨するのだろう?