【6月1日 AFP】米ニューヨークは、決して眠らない都市だ。だが、つらい通勤ラッシュや長時間労働、激しい競争が強いられる職場環境では、どんなにハイテンションなパーティー好きでも勤勉な社員でも充電が必要だ。

 しかし最近は、コーヒーをがぶ飲みしたり栄養ドリンクをあおったりする代わりに、勤務時間内にちょっとした仮眠をとることを選択するニューヨーカーたちが増えている。

 富裕層の健康意識の高まりを受けて、米国では青汁やホットヨガ、抹茶などが次々と流行してきたが、今登場しているのは、静かな環境で仮眠がとれる空間を客に有料で提供するビジネスだ。

 3か月前にオープンした「ナップヨーク(Nap York)」もその一つ。ペンシルベニア駅(Pennsylvania Station)近くの3階建てビルにあるこの店では木製の寝台付き個室を、昼夜を問わず30分間12ドル(約1300円)で貸し出している。

「疲れ切ったすべてのニューヨーカーたちにくつろげる場所を提供したい」と言うのは、同社マーケティング部長のステイシー・ベロリク(Stacy Veloric)氏。「ニューヨーク市内で安らぎと静けさを見つけるのは至難の業ですから」と語った。

 同店のオープン時の個室数は7室だったが、すぐに需要が供給を上回ってしまったため、さらに22室を追加。近々、屋上にハンモックも設置する予定で、こちらの利用料は30分15ドル(約1650円)となる見込みだ。

 米国人の睡眠不足は事実だ。米疾病対策センター(CDC)によると、米国人の3分の1は必要な睡眠時間を取れていないという。

 シエナ大学研究所(Siena College Research Institute)が行った調査によると、8時間以上の睡眠を取っているニューヨーク住民はわずか24%で、半数近くの睡眠時間は6時間以下だった。

 睡眠不足は、いらつきや生産性の低下、集中力の欠如などを引き起こす。ランド研究所(RAND Corporation)による2016年の報告によると、これによって米経済が被る損失は最大4110億ドル(約45兆円)で、労働日数に換算して1年につき123万日分に相当するという。