■混雑する山腹

 1980年代には、ネパール政府はエベレストの登山ルート1本につき1チームだけに登山許可を与えていた。そのため各国の代表チームや、大手スポンサー付きの経験豊かな一握りの登山家しか足場を築けなかった。だがこの規制が1990年代に廃止されて以来、もうかるこの産業の分け前を求めて、登山会社が山腹に群がるようになった。

 今年、ネパール南側からは、料金を払った346人の登山者が挑戦する。2017年に許可が下りた史上最多の373人よりわずかに少ない。チベット側からの登山は180人が予定しており、当たり年となりそうだ。一方、昨年は登山者のうち、6人が死亡している。

 ニュージーランドを拠点とする旅行会社アドベンチャー・コンサルタント(Adventure Consultants)のオーナーで、エベレストの登山ガイド歴27年のギー・コッター(Guy Cotter)氏は、新たな登山者の多くは経験不足だと警告する。

「今や人々はインターネットで登山旅行を最安値で購入できる。だが一部の業者は、経験に関する基準を持っていない。(そうした業者の顧客である)彼らは登山家ではない。エベレストに登ったという勲章が欲しいだけだ。賞杯が欲しいだけなのだ」(コッター氏)