【5月22日 AFP】W杯通算4度の優勝を誇るサッカーイタリア代表だが、昨年11月に行われたスウェーデンとの欧州予選プレーオフに敗れて60年ぶりに本大会進出を逃し、W杯ロシア大会(2018 World Cup)には出場しない。AFPは今回、1982年W杯スペイン大会で優勝したイタリア代表の守護神で主将も務めたディノ・ゾフ(Dino Zoff)氏にインタビューを行った。

 優勝チームの選手としては史上最年長となる40歳でトロフィーを掲げたゾフ氏は、6月14日に開幕する今大会をどういう心境で観戦するのか聞かれると、イタリア不在の大会は本物のW杯のような気がしないと語っている。

――イタリアがスウェーデンとの欧州予選プレーオフに敗れたときの気分はどうでしたか?

「私は家族と家にいた。イタリアは60年間W杯出場を逃していなかったので、当然つらい気持ちになった。大会出場国には、われわれが手にしたトロフィーや歴史を持っていないチームがいる。部外者として大会を見ることはイタリアにとって普通のことではなく、W杯ではないみたいだ」

「イタリア人にはサッカーが根付いているので、われわれは大会に関心を示すだろう。しかし、知らないチームの試合を観戦するのはあまりにも酷だ。4度のW杯王者として歴史に名を刻んでいるわれわれのチームは家にいるのだから」

――あなたにとってW杯はどのような意味がありますか?

「私にとってW杯以上に素晴らしいものはない。それがすべてであり、喜びそのものだ。40歳という年齢で、チームの主将として頂点に到達したんだ。幸福が波のように押し寄せた。W杯がサッカーの最高峰だからこそ、キャリアの最高到達地点だった」

――国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングで、イタリアは20位まで落ちました。そのことについてはどうお考えですか?

「W杯出場を逃し、ランキングで20位まで下がった。自分の時代について話すのは好きではないが、われわれは常にベストチームの一つだった。イタリアサッカーにとってよくない兆しだ」

――しかし、クラブレベルでは欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2017-18)でユベントス(Juventus)が8強、ASローマ(AS Roma)がベスト4に入り、ヨーロッパリーグ(UEFA Europa League 2017-18)でもラツィオ(SS Lazio)が準々決勝まで勝ち残るなど、イタリア勢のチームは健闘しています。

「その通りだ。しかし、それは外国人選手が数多くいるおかげだ。われわれは代表チームを立て直さなければならないし、たとえ数が多くなくても若いタレントの存在は必要不可欠だ。若い世代の選手が少なくなってきているが、われわれは将来の可能性を信じることから始めなければならない」

「2006年にイタリアはW杯で優勝することができた。それは黄金世代の選手がいたからだ。私が指揮を執っていた2000年には黄金世代がいて、欧州選手権制覇まで目前だった。今は若い選手の台頭を辛抱して待たなければならない。彼らはわれわれの未来なのだから」

――イタリアは戦術に縛られていて、若い選手はテクニックを軽んじているとよく耳にします。

「私は原理主義というものが好きではない。技術、戦術、フィジカル。若い選手はそのすべてを向上させていかなければならないが、その前に一定の年齢までは自由なプレーを認めてあげることも必要だ。若い選手は温室育ちだという印象を受けることがあるかもしれない。子どもは成長するための余白を必要としており、厳格なルールで縛ってはいけない」

「われわれは学校も含め、彼らにもっとプレーをさせるべきだ。だけど最近は、子どもたちがサッカーの練習をするのは週に何回だろうか?授業、英語のレッスンなどたくさんのことがある。以前よりとても忙しくなった」

――あなたの時代とは状況が変わったとお考えでしょうか?

「われわれの方が良かったということではないし、われわれが今と違うことをしていたということでもない。でも状況はもっと好ましいものではあった。あなたは子どもを庭や道路に長い時間放っておくことはできないはずだ。それに加えて子どもに週何時間もサッカーの練習をさせないはずだ。私の時代には一日8時間プレーしていた。午後1時から夕食の時間までね」

――構造的な問題があるのでしょうか?

「構造もあると思うが、まず選手の数が少ない。私の地域(イタリア北東部フリウリ・ベネチア・ジュリア<Friuli Venezia Giulia>自治州)にはどの村にもチームが一つあった。今はチームを作るためにいくつもの村でグループを形成しなければならない。生まれてくる子どもが少ない。選手の数が少ないし、ほかのスポーツをする機会も増えた」

――サッカーの地位が危ぶまれているということでしょうか?

「イタリアはサッカーの国だ。われわれには強い伝統がある。それは深く根ざしており、W杯や欧州選手権で優勝してきた。サッカーはシンプルで大衆のものだ。そういったすべての要素がこのスポーツの価値を守っている」(c)AFP/Stanislas TOUCHOT