■メタンフェタミンの街

 バングラデシュで流通する「ヤーバー」のほぼ全ては、ミャンマーとの国境を流れ、ロヒンギャ難民が昨年ボートにすし詰めになって渡って来たナフ(Naf)川を越えてミャンマーから入って来る。だが今ではミャンマー東部のメタンフェタミン製造所で作られた錠剤もボートで運ばれてくる。

 これらはバングラデシュの街、テクナフ(Teknaf)周辺に到着する。テクナフの住民たちによれば、みすぼらしいたたずまいの街の中で今、麻薬関連の利益から流れてきた資金で買った高性能の改造バイクや豪華な家が目に付くという。

 コックスバザールのロヒンギャ難民の中には薬物取引で得た金で極貧から抜け出した人もいる。違法薬物の運び屋から売人に転じたというロヒンギャの男性は「私は5年前にこの仕事に関わるようになった」と語った。「私がやらなければ、他の誰かがやるだけだ」

 報復を恐れ、匿名を条件に取材に応じたこの男性は、違法薬物取引で手にした金を使って家族で難民キャンプを出てコックスバザール市内のアパートに移ったという。

 テクナフから北に延びコックスバザールに続く唯一の幹線道路はあちこちに検問所がある。だが、貧しい地元住民に加え、薬物を運ぶリスクを日常的に取るロヒンギャの数は増えている。

 AFPの取材中にも、1時間のうちに2件の押収現場をこの道路沿いで目撃した。1件目では捨てられたバスの座席の下から1万2000錠の薬剤が見つかり、2件目では幼い娘を連れ、タマリンドの実が入ったポーチに薬物を隠し持っていた女が逮捕されていた。この女は2年以下の禁錮刑を受ける可能性があるという。