■ミャンマー軍兵士

 国境の反対側、ミャンマー・ラカイン州の麻薬組織の幹部らの正体は今のところはっきりしていないが、流通ルートの末端の方にいる役人や現地の商人、兵士らは捕らえられている。

 5月7日にはラカイン州マウンドー(Maungdaw)地区の検問所で、20万錠の薬物を所持していた陸軍の兵卒が逮捕された。これを受けて行われた隠れ家の家宅捜査では、輸送用の袋に入った錠剤160万錠が発見された。

 ナフ川から数キロしか離れていないマウンドーでは、まだ暴力の嵐が吹き荒れていた昨年10月1日にも、現地の価格で280万ドル(約3億1000万円)相当の200万錠近いヤーバーを所持していた兵士2人が拘束されていた。

 巨額の金は、思いもよらない同盟も生み出しつつある。それぞれ異なる理由でミャンマー政府と対立しているラカイン州の武装勢力とロヒンギャの武装勢力が、薬物をめぐって協力しているとの臆測が流れている。匿名で取材に応じたミャンマーの麻薬捜査関係者は「彼らは武器を購入するために密売に一緒に関与している」と述べた。

■薬物流通に伴う暴力

 薬物の流通には暴力が伴う。アンワラ・ベグム(Anwara Begum)さんは血に染まったTシャツに開いた穴に指を通して見せた。テクナフに近いナヤパラ(Nayapara)の荒廃した路地で息子のホセイン・アリ(Hossein Ali)さんの命を奪った銃弾が開けた穴だ。

 警察は違法薬物関連の殺人事件として捜査し、難民キャンプの悪名高い殺し屋でロヒンギャ武装組織との関わりもあるとされる人物の関与を指摘している。

 ホセインさんの遺族は薬物との関連を否定し、別の家族とのいさかいが原因で殺されたものだとしている。理由はなんであれホセインさんの殺害や何度も起きている誘拐事件はロヒンギャ難民に衝撃を与え、キャンプには恐怖とうわさが飛び交った。

 本当はホセインさんではなく自分が狙われていたのだと言うホセインさんの兄、ハッサン・アリ(Hassan Ali)さん(32)は「各キャンプに30~40人のギャングがいる」と語った。「私はもはや安全だとは感じない。だがわれわれにはどこにも行くところがない」 (c)AFP/Aidan JONES / Sam JAHAN / Hla Hla HTAY in Yangon