■「医師たちは国から出ていっている」

 社会主義者のマドゥロ大統領は、自国の窮状は米国に仕掛けられた「経済戦争」のせいだと非難し、状況改善を急ぐと約束した。しかし、16歳のユルアンヘラさんには時間がない。肺がんにかかっている彼女は次の化学療法の開始を待っている。母親のシュガーさんは娘に必要な治療を見つけることができるのかどうかも分からず、なすすべもなく泣いている。がんのような慢性疾患については治療に必要な医薬品の95%、つまりほとんどすべてが手に入らない。

「娘は化学療法のセッションを17回受けなければならない」とシュガーさん。必要な薬は外国から購入する必要があるとしながら、「うちにはお金がない。支援を受けている」と続けた。

 隣の病室では、4歳のルアナちゃんが印刷されたアルファベットの文字を切り抜いて遊んでいた。彼女も脳腫瘍の手術を待っている。母親のロサさんは「2か月間、化学療法を受けることができずにいた。責任は、抗議デモが起きないと市民の声に耳を貸さない指導者にある」と述べた。

 このがん病棟にあるMRIなどの画像診断装置や放射線治療用の医療機器は動かない。匿名で取材に応じたある女性の医師は「機器が不足していて治療できない」と嘆く。「症状が改善しても、薬が不足していたために悪化し、亡くなってしまった患者らもいる」

 水道管は壊れ、動いているエレベーターは1台だけ。ホールにはネズミやゴキブリが目につく。この小児病院には対処すべき問題が山ほどあると医師たちは言う。

 腎臓病科のベレン・アルテガ科長は、AFPの取材に月給では1キロの肉しか買えないと話した。国際通貨基金(IMF)は今年のベネズエラのインフレ率は1万3000%超に達すると予測している。

 抗生物質がないために、病院で4人の子どもが亡くなるのを見たとアルテガ医師は言う。最新統計によると2015年から16年にかけて、乳幼児の死亡率は30%以上も上昇した。

「医師たちは国から出ていっている」とアルテガ氏。ベネズエラ医師会によると、医師の3分の1が国外に移住してしまったという。(c)AFP/Alex VASQUEZ