【5月10日 AFP】初期の太陽系からはじき出された小惑星が、その中心部から数十億キロ離れた海王星軌道外側の太陽系外縁部で発見された。天文学者チームが9日、研究結果を発表した。

 英学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(Astrophysical Journal Letters)」に掲載された論文によると、この興味深い天体は「カイパーベルト(Kuiper Belt)」と呼ばれる太陽系外縁領域で観測された初の炭素豊富な小惑星だという。カイパーベルトには氷に覆われた天体が多数存在している。

 研究チームは、その炭素豊富な組成から、小惑星が内部太陽系で形成されたことを強く示唆しているとし、火星と木星の間にある小惑星帯で形成された後、太陽系外縁領域まで移動した可能性があるとしている。そうしたことから、小惑星は「原始太陽系の名残」となるものと考えらえるとした。

 初期太陽系の理論モデルは、巨大ガス惑星の軌道が不安定だった激動期に、岩石質の小天体が太陽系の中心部から外縁領域の軌道にまではじき出されたことを示している。このようなモデルは、カイパーベルトに少数の岩石天体や炭素が豊富な小惑星などが存在するであろうことを示唆するものだ。

 チリに設置された欧州南天天文台(ESO)の望遠鏡を使用した今回の最新観測結果は「太陽系初期の激動の時代を描写した理論モデルに強力な裏付け」を与えていると、ESOの声明は指摘している。

 今回の小惑星発見に至った理由の一つは、光の反射がカイパーベルトにある他の天体と異なっていたことだ。カイパーベルト天体は氷質である一方、小惑星は岩石質だ。

 論文の主執筆者で、英クイーンズ大学ベルファスト(Queen's University Belfast)のトム・セクル(Tom Seccull)氏は「それは、より詳細な観測の対象とするに足るほど風変わりな天体のように見えた」と話す。

 とはいうものの、その観測は非常に困難だった。幅300キロのこの小惑星は地球から40億キロの距離にあり、暗いのだ。

 論文の共同執筆者で、チリ・カトリック大学(Pontifical Catholic University of Chile)のトマス・プジア(Thomas Puzia)氏は、こうした観測について「漆黒の夜空を背景にして巨大な石炭の山を観測するようなものだ」と説明した。

「2004 EW95」と命名されたこの小惑星は移動しているうえに、非常に暗い。「観測データからできるだけ多くの情報を引き出すために極めて高度なデータ処理技術を用いる必要があった」と、セクル氏は話した。(c)AFP