【5月9日 AFP】第71回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)が8日、南フランスのカンヌで開幕した。今年の映画祭では、女優らが業界の性差別に対する抗議行動をレッドカーペット上で行うと誓っているほか、世界的に有名な監督2人が出席を阻止され、出品作品が自国で上映禁止に見舞われるなど、過去数年間で最も政治・社会色の強いものとなっている。

 米映画界は、大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏のスキャンダルで未だに浮足立ち、カンヌ映画祭でも女性監督の存在感の薄さに批判が上がっている。そのようななか、豪女優ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)と米国のエヴァ・デュヴァネイ(Ava DuVernay)監督、米女優クリステン・スチュワート(Kristen Stewart)らは、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)告発運動「#MeToo(私も)」やセクハラ撲滅キャンペーン「タイムズ・アップ(Time's Up)」に賛同し、他の女優や女性映画制作者とともに12日に抗議行動を行うと表明。ブランシェットは映画祭の審査委員長で、残る2人も同審査員を務めている。

 ブランシェットは8日、コンペティション部門にノミネートされている監督21人のうち、女性がわずか3人であることに対して失望感を示し、「(今年は)審査委員に女性が多いが、コンペティション部門にも女性がもっとノミネートされることが望ましかった」と述べた。

 ブランシェットは衣装でも力強いメッセージを表現した。開会前には、他の女性審査員らと同様にスーツ姿で現れ、また開会式でも、2014年ゴールデン・グローブ(Golden Globes)賞授賞式で主演女優賞を受賞した際に着たのと同じ、ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(Giorgio Armani Prive)の黒のドレスで登場した。使い捨ての消費文化に対する強い意志表明となった。

 人気SF映画「スター・ウォーズ(Star Wars)」シリーズのスピンオフ新作「ソロ(Solo)」の初上映もあるが、政治色の強い今年の映画祭においては、女性監督の少なさや12日のレッドカーペットでの抗議行動が最も注目を集めるだろう。

 LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)が題材の映画は12作以上を数え、また児童虐待、男娼、自身に対する性別適合手術などをテーマにした作品も出品されており、今年のカンヌはスキャンダルと社会的に賛否両論の作品がずらりと並んだ。