■ゲーム企業が女性社員にとって「思想警察」に

 この女性社員、スン・ヘジン(Sung Hye-jin)さんは、ツイッター上でいくつかのフェミニスト団体をフォローしたり、性差別主義の男性を俗語でののしった投稿をリツイートしたりしていた。すると、ゲーム業界の顧客の中心層である若い男性ゲーマーの一部から、スンさんの解雇を要求する声が上がった。スンさんを「薄汚いイデオロギーを信奉するがん細胞のようなやつだ」とこき下ろす書き込みもあった。

 これを受けてスンさんは、「思慮を欠いた私の行動がこうした問題を引き起こしたことをおわびします」とツイッターに投稿。誰かを傷つけたとしたら申し訳なかったと謝罪し、問題とされた団体のフォローをやめると明言した。

 IMCゲームズの最高経営責任者(CEO)、金ハッキュ(Kim Hak-kyu)氏は、スンさんの行動は「過ちではあるが犯罪ではない」とし、スンさんは引き続き同社で働いている。同時に金CEOは顧客に対し、同様のことが再発しないよう「常に警戒していく」とも述べた。

 しかし韓国労組2大全国組織の一つ、全国民主労働組合総連盟(民主労総、KCTU)や人権団体は、同社の調査自体を非難。KCTUは声明で「ミソジニー(女性嫌悪や女性蔑視)に満ちた今回の対応は…多くの女性にショックを与え、ぞっとさせた」と述べ、金CEOや多くのゲーム企業は女性従業員に対する「思想警察」だと批判した。紛糾した議論がやまない中、今度は金CEOが謝罪する事態に至った。

 世界のゲーム業界はゲームの中の世界と現実世界の両方で、女性の扱い方をめぐって批判されてきた。それを端的に示したのは、2014年に米国で起きたいわゆる「ゲーマーゲート騒動」だ。ゲームの中での女性の描かれ方を批判した人々が殺害やレイプの脅迫を受けたことから、ゲーム業界の性差別的な文化に対し改革を求める声が上がった。