■悪影響は?

 そして特に懸念されるのは、粒子のサイズが小さいことだ。研究チームによると、一部の粒子は直径が11マイクロメートルで、人毛の直径の約6分の1しかないという。1マイクロメートルは1000分の1ミリ。

 論文の共同執筆者でAWIの生物学者のイルカ・ピーケン(Ilka Peeken)氏は、このことが意味するのは、魚が常食とする小型甲殻類などの「北極海に生息する微小な生物でも容易に体内に摂取できる恐れがあるということ」だと指摘する。その上で「マイクロプラスチックが海洋生物にとって、また最終的には人にとってどれほど有害なのかは、まだ誰も確かなことは言えない」と話した。

 今回の研究で、ピーケン氏と研究チームは採取した氷コアに赤外光を照射する分光計を使用。氷に含まれるプラスチック片が何を起源とするのかを判定するために、プラスチック片で反射される赤外光を分析した。

 太平洋北東部の海水がベーリング海峡(Bering Strait)を通って流れ込むカナダ海盆(Canada Basin)で採取したサンプルは、包装材に用いられるポリエチレンを多く含んでいた。論文執筆者らはこの分析結果から、この地域のマイクロプラスチックが主に「太平洋ごみベルト(Great Pacific Garbage Patch)」に由来するものだと結論づけた。大量のプラスチックごみが渦巻いているこの海域は現在、フランス、ドイツ、スペインの国土面積の合計を上回る範囲に及んでいる。

 また研究チームによると、プラスチック粒子は海氷内に2~11年間とどまるという。

 この2年から11年という期間は、海氷がロシア東部シベリア(Siberia)や北米北極圏の海域から南へ移動し、デンマーク領グリーンランド(Greenland)とノルウェーの間のフラム海峡(Fram Strait)に到達するのに要する時間に相当する。海氷は同海峡で融解する一方、北方の海域では新たな海氷が形成されるが、このサイクルは地球温暖化によって加速される。