■北朝鮮に戻った脱北者のその後は分からない

 しかしチュさん自身は、そうは思っていない。10代や20代の若い脱北者は「とてつもなく大きな希望」を抱き、年長の脱北者たちよりもはるかに早く韓国社会に溶け込むことに成功しているようだとチュさんは言い添えた。

 韓国政府のアンケート調査では、同国在住の脱北者の約4分の1がホームシックにかかり、少なくとも一度は北に戻ることを考えたことが明らかになっている。

 実際に帰国した人々もいる。ここ数年、北朝鮮の国営メディアには、そのうちの少なくとも20人が登場し、南にいた頃の「地獄のような」日々を涙ながらに語ったり、「二級市民」として格下扱いされたと告白したりしている。

 しかし韓国政府は、このうちの数人は北朝鮮に拉致されたと主張。彼らのメディア出演は台本に則したものと考えられ、その後、どんな運命をたどったかは知る由もないと非難している。人権団体の説明によれば、北朝鮮では脱北者に対し厳罰が与えられる。

「私は、韓国社会を地獄だと思ったことは一度もありません」とチュさん。「でも命の危険を冒して韓国にやって来たのに、社会的な差別や偏見のせいで自殺したり外国に移住したりする人たちを見ると、胸が痛みます」と続けた。(c)AFP/Jung Hawon