【4月29日 AFP】チンパンジーの骨の粉末ひとつまみ、ヤモリの唾液、ハゲワシの脳を少々──。これらはおとぎ話の魔女のスープの材料ではない。こうした数多くの動物の部位が、二日酔いやぜんそく、さらにはがんやエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)まで、ありとあらゆる病を治すとして珍重され、毎年数十億ドル規模で違法取引が行われているのだ。

 サイの角やセンザンコウのうろこ、トラの骨といった広く知られているものの他、乾燥させたタツノオトシゴ、ナマケモノの爪、オニイトマキエイのえら、マカクザルの胚なども違法取引の対象となっている。絶滅が危惧されている動物の部位も少なくない。

 専門家らによると、こうした産物のなかには、アジアやアフリカのヒーラーらが何世紀にもわたって用いてきた生薬もあるというが、多くは疑わしい偽医者が万能薬として取り扱っているものだという。

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)」のジョン・スキャンロン(John Scanlon)事務局長はこうした取引について「現代のインチキ薬売り」とAFPの取材に語った。

 スキャンロン氏は「われわれは伝統的な治療を批判することはしない」と強調した上で、「しかし伝統薬とは何ら関係のない、特定の野生生物の部位に効用があると売り込む人々は、立場の弱い人々を利用・搾取していると指摘する。例えば、違法に取引されているサイの角はがんに効果があるとされているが、科学的には何も証明されていない。こうした取引によって動物たちはその数を大幅に減らしている。

 2016年の国連世界野生生物犯罪報告(UN World Wildlife Crime Report)によると、1960年には推定10万頭のサイがアフリカに生息していたが、今日ではアフリカおよびアジアに残されたサイ全種の合計でも2万8000頭を下回るという。

 野生生物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」のリチャード・トーマス(Richard Thomas)氏は、「現在のサイ密猟危機は2007年ごろに始まった。偽の医薬用途がそもそもの由来だ」と指摘している。