■米朝それぞれに思惑

 一方、金委員長に関するトランプ大統領の発言はこれまでに二転三転しているものの、カジアニス氏は国連安全保障理事会(UN Security Council)決議に基づいた制裁強化などで、トランプ氏が圧力をかけ続けた点を評価した。カジアニス氏は、トランプ氏の行動がなければ「金委員長が数週間前に通常のミサイル試射を実施していた可能性は高く、ICBMの試射も行っていた可能性がある」と述べた上で、「これはトランプ政権にとって意義深い、だが非常にささやかな勝利だ」と分析した。

 ウィット氏もトランプ政権が「最近の出来事に影響を及ぼしたことは間違いない」と語る一方、北朝鮮は米国よりも明確な長期計画を持っているとの見解を示した。

 金委員長の宣言は南北首脳会談や米朝首脳会談に向けてより良いムードをお膳立てしたと言える半面、トランプ政権に対し、真剣な交渉で前向きな成果を挙げるよう求める圧力にもなっている。米国が北朝鮮に要求しているのは、完全かつ実証可能で不可逆的な非核化だが、韓国の文大統領は北朝鮮が体制の保証を求めていると語っており、会談が物別れに終わる余地も大きい。

 北朝鮮は以前より、朝鮮半島からの米軍撤退や、韓国への「核の傘」の提供を止めるよう米国に要求しているが、米政府はこうした措置は全く想定できないとしている。

 米戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の上級顧問で韓国部長のビクター・チャ(Victor Cha)氏はニュースサイト「アクシオス(Axios)」に対し、「この件全体の中で答えが出ていない特に目立つ問題」は、北朝鮮の譲歩に対して米国が何を見返りに与えるかだと語った。(c)AFP/Thomas WATKINS