■生前か死後か

 宗教上の儀式としての説明も可能性が低い。頭蓋骨がごみとともに捨てられていたからだ。

 ロッツィ氏によると、穴の周囲には切れ目を入れたりこすったりした跡があることも分かったという。これらは、穴を開けられた新石器時代の人の頭蓋骨で確認された痕跡に似ていた。

「穿頭術の痕跡であることに疑いの余地はないと考えている。それが唯一可能な説明だ」

 だが、石器時代の人が動物に穿頭術を施した理由は一体何だろうか──。ロッツィ氏によると「可能な説明は2つある」という。

「1つの説明は、人々がウシを治療していたこと。もう1つは、人への外科処置に挑む前にウシで練習していたことだ」

 しかし当時、周囲にはたくさんのウシがいたことから、第1の説明は可能性が低いと思われるとロッツィ氏は話す。

 今回の研究では、頭蓋骨に穴が開けられたのが、ウシがまだ生きている時か死んだ後かについては特定できなかった。だが、穴の周囲に骨の再生が始まっていた痕跡を確認できなかったことから、穿頭術が行われていたのであれば、その処置中にウシが死んだか、死後に穴を開けられたかのどちらかであることが考えられるという。(c)AFP/Pascale MOLLARD