■「嬉しい、これが僕だ」

 その時に様子について麻酔医のベルナール・ショリー(Bernard Cholley)氏は、「待っている間、決して不満を口にしなかったし、機嫌が良かったほどだ」と述べ、病院の誰もが「ジェロームさんの勇気と意志、そしてあのような難しい状況下での心の強さに圧倒された」と語った。

 そして、ついにドナーが見つかった。パリから数百キロ離れた場所で亡くなった22歳男性だった。ランティエリ教授らは1月のある日曜日にこの知らせを受け、輸送と手術に向けた準備が急遽開始された。ドナーの顔は、月曜日にはパリの病院に到着した。

 アモンさんの手術は、その翌日の昼前には終った。担当した医療チームは彼の新たな顔に現れた健康な顔色に励ましを受けたという。

 病院の腎臓専門医は、移植前の3か月間、拒絶反応を避けるためアモンさんに特別な血液治療を施したことを説明した。

「僕は最初の移植を直ぐに受け入れた。『これが自分の新しい顔だ』と思ったし、今回も同じだ」とアモンさん。「もしこの新しい顔を受け入れられなかったら、ひどいことになっただろう。アイデンティティの問題だから…でもこのとおり。嬉しい、これが僕だ」

 2005年にフランス人女性のイザベル・ディノワール(Isabelle Dinoire)さんが仏北部で世界初の顔面移植手術を受けてから、世界ではこれまで約40件の顔面移植手術が実施されている。(c)AFP/Hugues HONORE