【4月13日 AFP】国際バイアスロン連合(IBU)は12日、アンデルス・ベッセバーグ(Anders Besseberg)会長が辞任したと発表した。IBUは職員がロシア選手のドーピングを隠蔽(いんぺい)するための口止め料を受け取っていたとされる疑惑でオーストリア・ザルツブルクの本部とノルウェーの各支部に警察の家宅捜索が入っており、同会長は理事会に対して、このまま捜査が継続されるかぎりは退任すると通達したという。

 フランスの日刊紙ルモンド(Le Monde)は先日、世界反ドーピング機関(WADA)の査定結果を引用し、IBUがドーピングに関して「あらゆる手を尽くしてロシアに対する手続きが始まらないようにした」と伝えた。WADAは11日、AFPの取材に対して「ドーピングに関連したIBUの活動調査」をすでに開始していることを認めたが、詳細については明らかにしなかった。

 オーストリア検察が12日に発表した声明では、今週行われたIBU本部の家宅捜索に続いて、現在はドーピング、不正行為、そし贈収賄に関する取り調べが進められており、IBU職員をはじめ、ロシア・バイアスロンチームの選手とスタッフが対象であるとされている。一連の疑惑では、ドーピングが「適切な形で対処」されていなかった上に、「30万ドル(約3200万円)の賄賂が確約または受理されていた」可能性も浮上。捜索はオーストリアとノルウェーだけでなく、ドイツでも行われていることも明らかにされた。

 今回の疑惑の中心は2012年までさかのぼるIBUの活動と、オーストリア・ホッホフィルツェン(Hochfilzen)で行われた2017年のW杯となっている。WADAによると「生体パスポート」、「ベッセバーグ氏がロシアの利益を断固として支持していること」、「2021年世界選手権(2021 Biathlon World Championships)の開催権を当初ロシアに与えたこと」が問題視されている。

 IBUは2016年、ロシアが2011年から2015年にかけて国家ぐるみのドーピングを行っていたことが明るみに出る中で、2021年世界選手権の開催地をシベリアのチュメニ(Tyumen)に決定。しかし、WADAを筆頭に批判の声が高まったことを受け、IBUはロシアから同大会の開催権を剥奪した。

 今回の捜査では、ロシアの組織的ドーピングを告発し、現在は米国で亡命生活を送っているロシア反ドーピング検査所の元所長、グリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏が協力していたことが、同氏の弁護士によって明らかになった。

 ルモンド紙によると、ロドチェンコフ氏は捜査官に対して、ロシアのバイアスロン選手によるドーピングを隠ぺいするために、IBUはあらかじめ疑わしいデータを同国反ドーピング機関(RUSADA)に送り、「ドーピングをしたロシア選手が特定されないように画策していた」と話したとされている。(c)AFP