■UCIの規則ではどう定められているのか?

 UCIのメディカル委員に名を連ねているフランス人医師によると、UCIの現行規則では「(所属チームのライダーに対する)身体および心臓検査と監視の実施が義務づけられている」としている。

 UCIのプロツアーに参戦するグルパマ・FDJ(Groupama-FDJ)のチーム医師は、「UCI規則に従い、われわれは毎年チームライダーに最も厳しい心臓ストレス検査を義務づけ、(ライダーの競技を阻害するような)異常は何もないという診断書を取得している。トップレベルのライダーに対しては、2年に1度の心臓超音波検査も実施している」と述べた。

 ところが、専門家によると一連の検査でも心臓疾患のなかには見つけにくいものがあり、ベルギー自転車競技連盟(Belgian Cycling Federation)のメディカル委員は「これらの検査は決して100パーセントではない。心臓の世界的権威が超音波検査や心電図といったすべての検査を実施したとしても、一部の異常は検知できない場合がある。われわれにできることは、ライダー全員に対して緊密な監視体制を維持することだけだ」と語った。

 ホーラールツ選手が心停止で23歳という若さで亡くなったことは、特にベルギーにとっては痛ましい悲劇となっている。2年前にはクリテリウム・アンテルナシオナル(Criterium International 2016)のレース中に同国出身の22歳、ダーン・ミンヘール(Daan Myngheer)選手が心臓発作を起こして死亡する事故があった。

 2009年には第8回ツアー・オブ・カタール(8th Tour of Qatar)に参戦していた21歳のベルギー人ライダー、フレデリック・ノルフ(Frederiek Nolf)選手が、宿泊先のホテルにおいて心臓発作の疑いで死亡しているのが発見された。この悲劇は、2003年にフランス人ライダーがドイツ・ツアー(Tour of Germany)の後に心臓発作と思われる症状で死亡しているのが見つかった件を連想させるものだった。