■収益の半分をホームレス支援団体に寄付

 このホテルは一般人も利用していた。その一人、ジム・ジョージャウ(Jim Georgiou)さんは、ここに2002年から長期滞在していたが料金滞納によって2011年に退去し、その後、愛犬テディと共に通りの反対側でホームレスとしての生活を始めた。今回のオークションに出品されるこれらのドアは、当時レコードを売ったお金を日々の生活費に充てていたというジョージャウさんが集めたものだ。

 2012年、ジョージャウさんは、改修工事の作業員がホテルの古いドアを廃棄処分にしているのをみつけ、友人の助けを借りてこれらを回収。最終的に50枚以上が集まったと、今回のオークションを主催する競売会社ガーンジーズ(Guernsey's)のアーラン・エッティンガー(Arlan Ettinger)社長が明らかにした。

 その後、ジョージャウさんは近くの図書館に通いつめ、数百時間かけてこれら客室のドアと宿泊客とを結びつける作業を行った。その結果、有名人が滞在していた客室の扉22枚を特定できた。1960年代のファッションアイコン、イーディ・セジウィック(Edie Sedgwick)が利用した105号室のドアもそのうちの一枚だ。セジウィックは、モデルでウォーホルのミューズだった。ウォーホルはこのホテルで映像作品『チェルシー・ガールズ(Chelsea Girls)』の一部を撮影した。

 現在は友人の部屋で暮らしており、すでにホームレスとしての生活はしていないというジョージャウさん。今でも自由に使えるお金は少ないが、オークションの収益の半分はホームレス支援団体「City Harvest」に寄付する予定だと話す。同団体は、市内の飲食店や小売店から出る食べ物の余剰分を困っている人に届ける活動を行っている。

 出品されるこれらのドアは現在、近くにあるリッコ/マレスカ・ギャラリー(Ricco/Maresca Gallery)で展示されている。(c)AFP/Laura BONILLA CAL