【4月6日 AFP】マダガスカルに生息する霊長類のネズミキツネザルは、1日の摂取カロリー量を成体期を通して少なくすると他の個体より長生きするとの研究論文が5日、発表された。食事と寿命をめぐって繰り広げられている議論の火に油を注ぐ結果だ。

 今回の研究では、摂取カロリーを制限したネズミキツネザルの方が、老齢期になってもより身体的に若々しく、がんや糖尿病などの病気にかかる確率も低かったが、灰白質が減少するペースは他よりも速かった。

 英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)に掲載された論文は、「継続的な適度(約30%)のカロリー制限を成体期の早期に開始した場合、ネズミキツネザルの寿命を(飼育下でカロリー制限をしなかった同年齢の個体に比べて)50%延ばす可能性がある。今回の研究結果はその証拠を提供するものだ」としている。

 灰白質減少の加速は懸念材料となり得る副作用だが、ネズミキツネザルの認知能力に明白な影響を与えていないと、研究を行ったフランスのチームは指摘している。

 必須栄養素を減らしたり栄養失調を起こしたりせずに食物の量を減少させるカロリー摂取量の制限は、ラットなどの短寿命種動物の寿命延長や、一部の動物の全般的な健康状態の向上などの効果があることが、これまでの研究で明らかになっていた。

 だが、平均寿命が27年と比較的長く、個体によっては40年生きるアカゲザルを対象に行った、カロリー制限と寿命延長の関連性を調べた過去の研究では、これと相反する結果が出ている。人にとっての潜在的な利点についても、まだ結論は出ていない。

■最高寿命をはるかに超える

 ネズミキツネザルの平均寿命は約5.7年で、個体によっては12年生きるとされる。

 2006年に開始された今回の研究では、ネズミキツネザル15匹に「標準的な」餌1日分として生果実6グラムの他、ジンジャーブレッド、シリアル、ミルク、卵を混合した特製の餌15グラムを与えた。1日の摂取カロリー総量は25.1キロカロリーだ。

 別のネズミキツネザル19匹には、内容は同じで、1日の摂取カロリー総量が約30%少ない(17.0キロカロリー)餌を与えた。実験開始時、ネズミキツネザルの年齢は3歳強だった。

 実験の結果、カロリー制限グループのネズミキツネザルは平均で9.6年生きたのに対し、標準的な餌を与えたグループは同6.4年だった。実験終了までに、標準餌のグループは15匹全てが死んだ一方、カロリー制限グループのうちの7匹はまだ生存していた。

 この7匹は全て13歳に達した。「これは(これまでに記録された)最高寿命をはるかに上回っている」と論文は指摘している。(c)AFP/Mariëtte Le Roux