【4月6日 AFP】英国内で論争となっている男女間の給与格差や幹部職員に対する高給批判を背景に、ロンドンのある企業は、社員がお互いの給与を決めている。

 ブックメーカーのスマーケッツ(Smarkets)は、給与制度の透明性を高める急進的な仕組みを導入した。社員はお互いの給与の額を知ることができ、他の社員に支持されれば昇給のリクエストも出せる。

 同社のソフトウエアエンジニアのアンジェリン・ミューレ・マーキス(Angeline Mulet-Marquis)さんは、「大部分の人は自分が望んだものを得ている」と語った。社員の給与は共通して10~30%アップしている。

 スマーケッツの新卒エンジニアの給与は4万5000ポンド(約675万円)だが、高い技術を持つシニアエンジニアの給与は6桁(約1500万円以上)に達している。

 ロンドンはスタートアップ企業やグローバル企業のハブとして有名だが、これほどオープンな給与制度を導入している企業は珍しい。

 タワーブリッジ(Tower Bridge)に近いスマーケッツのオフィスは、シェフが調理したランチ、テーブルサッカーやビデオゲームなど、従業員が楽しく働ける環境を整えている。

 社員は年2回の給与査定時に約5人の同僚に自分の評価を求め、彼らが認めれば昇給の推薦をもらえる。最終的な昇給は、面談と業界データとの比較によって決定される。社員は不満があれば、自分自身で給与の額を決めることもできる。だが、同僚の評価に逆らって昇給を決めたことがわかってしまうため、このようなケースはまれだという。

 ロンドン大学経済政治学院(London School of EconomicsLSE)のジョーディ・ブラナス・イ・ビダル(Jordi Blanes i Vidal)教授によると、このような仕組みは営業など業績が明確な職種で最も効果を発揮するという。同教授は、「給与や生産性に違いがあることの正当性を説明するのが難しい場合、透明性のある給与制度は人々の意欲を失わせる可能性がある」と指摘した。(c)AFP/Rosie SCAMMELL